最近の篆刻作品。蟋蟀(こおろぎ)のやつ。

詩經より、「蟋蟀入我牀下」を彫ってみた。

中国では、蟋蟀(こおろぎ)というのは特別な昆虫みたい。 天子の愛玩物的なやつみたい。

かなり昔、「ラストエンペラー」って映画を見たことがある。清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の話だ。 かれが、皇帝に即位したのは小さな少年の時だ。その時玉座で虫籠みたいな容器に蟋蟀を入れて 遊んでいた。それから時が流れて、いろんなことがあって、平民となった溥儀が紫禁城を訪れる 場面があって、玉座までいって座ったら、その椅子の下からおなじ虫籠みたいな容器が出てきたシーンを 覚えている。 皇帝の象徴として使われていた。 あんな容器ってどうなんやろって思ったら、昔から金持ちは蟋蟀を飼って楽しむのにああいう容器を 使っていたのだそうだ。 わしはいちびりやから、北京に行く機会があった時に琉璃廠という古文化モノや骨董、文房四宝などを 扱う店が集まる地域に行って、探してみたことがあった。なるほど、同じようなやつが確かにあった。 しかし、直径5、6cmx長さ20cm足らずの竹か木の筒みたいなやつやのに何万円もした。 どこにそんな値打ちがあるんかわしにはわからんかった。 もちろんパス。

 

そんな話はどうでもええけど、蟋蟀という言葉自体になんか中国の人の思いがあるんかもしれん。 知らんけど。

で、「詩經」というありがたい本の中に「蟋蟀入我牀下」という言葉があるのだそうだ。 この本は元々、古の民の暮らしの中の古謡みたいなんを集めたものらしい。 簡単に言えば、ベッドに下にこおろぎが入ってきて鳴いてるよ、もう秋だなあというほどの意味なんやろ。 なんとなく世の中が秋めきかけてきたこのごろ、こんなことばを石に刻んでみようとしたのだ。

こんなやつ。

 

3cmX3cm。 蟋蟀という漢字は難しいんで絵でごまかそうという作戦だ。

これだけではおもろないんで側面にもなんか掘ってみよう。 普通は側款って言うて独特の書体の文字を彫る。作者の名前や日付その他関連の文章。 それの拓をとって篆刻印と並べて作品とする。 わしは、これが苦手やし、そうせんとあかんもんやと言うのにもいささか異議がある。 せっかく横の場所をつくるんやったら、いまの言葉の風景をもうちょっとだけ広げたい。 てなことで山頭火登場。

「酔うて こほろぎと 寝ていたよ」

これ好きやなあ。 で、これを下手ながら文字で描いて、

さらに下手ながら、こんな感じかなと絵も描いてみる。

4面あるんで、描きにくい。

墨を入れると、立体的に見える。

墨を入れると、立体的に見える。 あっちからみたり、こっちからみたり。 まあ、わからんけどこれはこんなもんかな。 次はまた、他のアイデアを練ってみよう。 楽しみには限りがない。

あじあんじゃんくしょん
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