塩田武士、「朱色の化身」。
「罪の声」、「歪んだ波紋」。「デルタの羊」、続けた追いかけてるなあ。
この人の作品は大好きだ。
大路亨はフリーのライター。地味な仕事の活動をしている。
父親ゆずりか。
父親は頑固な元新聞記者。ガンが判明して、闘病生活だ。
ある日、父に頼まれて、辻珠緒という女性に会いたいと言う。なぜかははっきり言わない。
しかし、連絡がとれない。誰も居場所を知らない。連絡も取れてないと言うのだ。
何故か?
不思議だ。
そういえば、たしか、昔、一世を風靡したゲームの開発者として、インタビューしたことがあったはず。
周辺の人から聞き込みを始める。
会社の同僚は言う。彼女は天才的なゲームプロデューサだ。ゲームをするものを引きつけ、とりこにする何かをを持っている。
しかし、何故、突然いなくなった? わからない。
京都大学を優秀な成績で卒業。
有名金融企業に就職。女性ではトップクラスの昇進か?
なぜ、突然、仕事をやめたか?
素晴らしい経歴と才能がありそうなのに、なぜか、不確かな、不安定なものを抱えていそう。
しらべるうちに、疑問が次々に湧いてくる。
父はどこまで知っているのか。父の昔の仕事に関係あるのか?
あまりにも孤独な世界が見えてくる。
何を抱えて生きていたのか?
もしかしたら、生まれ育った、芦原温泉の街に関係があるのか?
その街でなにがあったのか?
その生い立ちは。
友達はいた。後に再会して、依存症になった子供をひきとって更生させてくれた。
なぜか?
調べれば調べるほど、光の裏にある影が見えてくる。
祖母との暮らし、義父との確執。
結婚生活もあった。京都の有名老舗の息子だ。
幸せなはずの結婚生活はどうなったのか?
母はどうなったのか?
決めたとおりまっしぐらに生きて行く。
それが幸せを呼ばないのか?
昭和31年の福井の大火、芦原温泉を焼き尽くした大火で何が起きたのか。
これを調べて何になるのか?
ライターとして記事にする気はないし、そういうことで取材をしてきた。
得るものは何か?
ゲームの世界に現れたのは、この凄まじい人生の縮図なのか?
それを乗り越えていくゲームの意味するものは?
一旦取り憑かれたら逃れるすべがない、理不尽が存在するのか?
なぜ、幸せになれないのか?
努力したら報われるということではないのか?
誰にも訪れる救いや癒しというものがないのか?
この理不尽は何なんなのだ。
このやるせなさは何なのだ。
この不条理は何なのか。
いつか心安らぐ日がくるのか?
よむほどに辛い。
必死で読んでしまう。
夢中で読んでしまう。