老街には正月が溢れていた。
なるほど、もう少ししたらテトと呼ばれるベトナムのお正月だ。
という事は中国と同じ陰暦で暮らす風習も根強く残っているということだ。
紅包というお年玉用のポチ袋や赤や金の飾り物が店頭に満載だ。
「この梅の鉢はなかなかすがたがええやん」
今日は土曜日だ、家族で繰り出して年末の買い物を楽しんでいるのかもしれない。
旅行社でもらった地図をたよりにぶらぶらと歩いて見る。
車で来る時は入り組んだ道だと思っていたが、地図を見るとほぼ東西南北に
道が走っている。それに細かく道路名の標識があるので、今どこにいるのかが
わかりやすい。
地図で見ると、衣類街、お菓子屋街、おもちゃ街、文具街、蒲団街などと
注釈が書かれている。要するにこういう店が固まって並んでいるのだ。
簡単に言えば、大阪で日本橋の電器屋街、千日前の調理器具街、松屋町の人形屋街、
本町の衣料品屋街、道修町の薬屋街(今はないけど)、こんなところが、一か所に
かたまってあるようなものだ。
便利と言えば便利だろう。この界隈にくれば何でもそろうのだ。
歩いていてもどんどん寒くなってきた。コートを着ておいてよかった。
それでも寒くて、ポケットに手を突っ込んで背中を丸めて歩かないといけない。
舗道があるのに道路は人で一杯だ。舗道は、店が張り出していたり、バイクや自転車が
止めてあったりして、まともには歩けない。それで車道をあるくのだ。
間欠的にバイクの群れが押し寄せてくる。信号が変わったからだ。
買うわけではないが、「見るだけ」でも楽しいものだ。
狭い町だから、大体隈なく回ったはずだ。
見落としても困らないが、教会も市場も全部見た。
後は、この街外れにあるホアンキエム湖に行って見よう。
日が暮れてしまった。
「ほう、ほう、こういうとこやったんや」
夕暮れの湖は電飾されてきらきらしている。湖岸は恋人達の寄り添う場所だった。
「電飾なんかないほうがもっとロマンチックやし、綺麗やのに」
恋人達にはどうでもいいことだろう。湖の中央には小さな島があって、小さな廟が
ある。
風がびゅっと吹いた。寒い。
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