カプシチンスキ、「黒檀」
これはすばらしい本だ。感動した。
ポーランドのジャーナリストの取材レポートであるが、取材レポートの迫力を持った
エッセイであり、小説ですらあると思える。
視線が低い。人々の生活に深く入り込んだ視線で眺めている。通りすがりではない。
こういう眺め方をする暮らしは、アフリカでは実に大変で危険なのだ。
アフリカを「アフリカ」という言葉であらわせるようなくくり方は存在しないという。
沢山の国が存在するが、本当は国でくくることもできないのだ。
漆黒の闇と精霊が支配する土地なのだ。
部族と家族の血と地のつながりだけがある。
低開発とか遅れた文明とかいういいかげんな考えで表現してはいけない別の次元の
世界があるのだ。
そういうところを外からがさっと包んで富だけを巧みに吸い上げる収奪マシンの
仕組みをつくりあげたのがヨーロッパ人達だった。
カプチンスキはヨーロッパでも痛みのわかる国に生まれた人だ。
だからこの人の視線に共感できるのだろう。
一気に読んでしまった。
立松和平、「道元禅師 永平寺への道 下」
立松和平の饒舌絶好調の続きだ。
様々な出来事はあったが、とうとう念願の修行の場を造ることとなった。
それが越前の国、永平寺だ。
この地で全ての栄華を手に入れようとすればそれも可能だったはずだが、
ひたすらストイックに座禅を続ける人なのだ。
正法眼蔵の世界を自ら暮らしているのだ。
そう言えば、「谿声山色」という写真集を前に紹介したことがある。
会津の村里の素朴な暮らしが、そのまま正法眼蔵の世界をあらわしていると
いう写真集でじっとみているとじわっと感動が体にしみ込んでくるような
本であった。当に、蘇東坡の詩のようだ。
谿聲便是廣長舌。
山色豈非清淨身。
夜來八萬四千偈。
它日如何舉似人。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。
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