金子光晴、「世界見世物づくし」
得意の上海、南京からジャワやパリをめぐる見世物ばなし。
それだけではなくて、やはり根底は旅の心を語る本だ。
独特の語り口で私の好きな街々を語ってくれるのが嬉しい。
時には、違和感のある話も、既に他で読んだ話もないではないが、新たに寄せ集めて
編んだ一冊なのかもしれない。
樋口一葉、「大つごもり・十三夜他」
先月は仲秋節があった。所謂「十五夜のお月見」だ。それで、ウェブサイトを少し
調べていたら、日本には「十三夜」という風習もあるという事だった。
十五夜の翌月の満月の夜にもお月見をするというのだ。お月見をすると言っても
この両方でしないと片月見になってゲンが悪いという事だ。
今年の十三夜は10月11日。
そして、十三夜の話が、「樋口一葉」の「十三夜」という小説にでてくるとあったので
早速買って読んでみる事にした。
年若くして、望まれて嫁にいったはずなのに、夫に苛められ、賤しめられて
いたたまれずに実家に帰ってきたのが奇しくも十三夜の夜であった。
母親はこれで片月見にならずにすんだと喜ぶ反面、娘の苦労を嘆き悲しむが
それでもやっぱり帰って耐えろと父に諭され、泣く泣く帰る。
その時乗った車の車引きが、幼馴染。放蕩の果てにこの身分・・・
小気味のいいテンポの美文が続く。おだやかながらも芯の強さが伺われる。
秋の夜は、こんな文を読むのもいいなあ。
毎週火曜は、最近夢中で読んだ本の話です。