京都、深草、石峰寺

前から行きたくてなかなか行けなかったところがある。
京都、深草にある石峰寺だ。
遠いわけでもないし、分かりにくいわけでもない。行きたいと思いつつ
忘れていただけのことだ。それで突然想い出して、無性に行きたくなった。
何故かと言うと、若冲がアレンジした石仏があるというのだ。
若冲が直接、石を彫ったわけではないが下画は全て描いたと思う。
ちょっと小雨模様であったが、京阪深草の駅を左手、山手の方に出ると
すぐに案内の看板があってありがたい。
左に曲がってから細い路地をまっすぐ行くと、山をちょっと登ったあたりに
寺の山門が見えてきた。
近くまでくると長い石段がある。なんのこれしきと上って行くと、
中国風の赤い塗り壁の山門がある。
「珍しく派手な山門やなあ」
中に入ると、「石仏五百羅漢」とあるから、「ここや、ここや」間違いない。
「撮影禁止って書いたあるで」、「何で?」何が痛むんやろ。
「著作権かなあ?」ようわからん。
とにかく行こう。その路地を入る前に、「若冲の墓って書いたあるで」
「ほんまや、是非参っていこ」、「天才にあやからなあかんもんなあ」
山道の戻って、少し登ると石仏群が現れた。
五百羅漢というだけあって、えらい沢山ある。
「これはええなあ」道の右下の方、殆どくずれかけた石仏が数体身を寄せ合っている。
布袋腹をだしたおじいさんのよう、気の良いとなりのおじさんのよう、赤子を抱いた
おかみさんのよう、年月にゆるゆると磨滅されて土に還りそうな今になって天から命を
もらったかのようだ。
托鉢の僧たちもいい。顔のようなかたちの中に、すこしのくぼみがちょんちょんと
あるだけで目とわかり、鼻もあり、口を閉じて祈っている僧もいれば笑っている僧も
いる。ずらずらずらとどこまでも並んでいて楽しい。
時の経つのを忘れそうな空間がここにはあった。

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