入院の時読んだ本。
昨年、胃癌手術で入院してる時に読んだ本として「青べか物語」の話をした。とても良い本だった。
それでも病院くらしはとても暇だった。少々散歩したりしても追いつかへん。
テレビを見るのはもともとあんまり好きではないんでイヤホンを耳につけて無理にみるのも
辛気臭い。
てなことでやっぱり本を読む。
こんなこともあろうかと入院前に買っておいたやつだ。
「幕末下級武士の絵日記 その暮らしの風景を読む」という題名そのまんまの絵日記で、
これがとても面白い。
舞台は江戸から北に十五里くらい、武蔵野の一角にある忍藩十万石の城下町。
主人公というか作者は尾崎石城という武士で、元々100石取りの偉いさんであった
みたいやけど何かのお咎めを受けて逼塞、謹慎を命じられた上、養子をとって家督を
譲って隠居するようにとの命をうけて窮屈な暮らしを始めている。
周りを憚った罪人暮らし、窮屈でストレス一杯のはずやのに絵を見ても文をみても
なぜか伸び伸びしてる。
自由自在の日常生活が立ち上がってくる。とても良い。
ほとんど毎回、文には絵が付いている。
石城は酒が大好きだ。飲み友達が頻繁にやってくる。
こっそりとお寺や友達の家に飲みにでかけている。
誰と誰がいて、何を飲んで何を食ったか。どんな話がでて? どんな雰囲気だったのか?
その絵からとてもよくわかる。
素晴らしい観察眼ではないか。
素晴らしいのは絵だけではない。
彼らの生活が素晴らしい。
給料が大幅に減って、お金がないはずやのにあんまり気にしてはらへん。
無いならないなりに楽しんではる。
貧乏な仲間にはご馳走するし、貧しい子供にご飯を食べさせたり、お互い様の
助け合いを極々自然体で日常的にやってはる。
読んでてとても嬉しくなる。
わしが子供の頃ってまだこんな暮らしが少しは残ってたと思う。
隣近所で食材を譲り合ったり、子供や年寄りの面倒を見るのを助け合ったり、
ちょっと入りすぎというほどの距離の関係やった気がする。
ええことも悪いこともあると思うけど、他人のことを思いやるというのが普通の感覚やった。
そういうのが今は無くなってきてるんやなあってつくづく思う。
九度山暮らしではテレビがないんで見ないけど、それでもちょくちょく見る機会はある。
大抵の場合はワイドショーみたいなんをやってて、皆でよってたかって他人の揚げ足取りを
面白おかしくわいわいがやがや、こんなんでは国が滅ぶんとちゃうやろかと心配するくらいだ。
知らんけど。
絵日記を見てるとその当時の武士の暮らしもよくわかる。
意外と質素ではあるけど、意外と自由だ。
お金の貸し借り、モノの貸し借り、本の貸し借り、いろいろやってはる。
冬の服がなくて風邪を引いたときもある。
飲みすぎてヘロヘロになったこともある。
とても楽しい人生では無いか。
そしてとても絵がうまい。
頼まれて描く本格的な絵もすばらしいけど、日常を描いた絵が絶妙だ。
こんな絵が描けるようになりたいなあって思う。
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ありがとうございました。