先日、滋賀の佐川美術館で田中一村の展覧会を見てえらく感動した。
最初は、奄美大島に暮らして、南国の極彩色の風景や素朴でおおらかな人の暮らしを
アンリ・ルソー風に描く異色の日本画家なんて勝手な先入観で見に行ったけど
とても本格的で正統的な南画系の水墨画をずっと描いて来た人で、その技量たるや
本当に感動的にすばらしいと思えるものであった。
それで痛く刺激をうけたんで、久しぶりに絹本に絵を描いてみたくなった。
そこでつらつらと考えた。
今まで絹本に絵を描くのは実に我流で、中国で買った絵絹を適当に裁断して、
呼吸を整えたら、そのまま描き始める。
呼吸は整わんでもええけど、よく言われる板貼りもしないし、ドーサも引かへん。
絵絹が墨の水分を直に吸ってボコボコになるけど構わずに描く。
それでも裏打ちをするとぴしっと仕上がるんで問題ない。
どうもこういうのが中国流らしい。万事適当、おおらかなとこがそう思える。
杭州の美術学校でも、絵絹への描画を正式に習ったわけではないけど、見てたら
そんな風にやってはった。
で、この度考えたのは、やっぱり細かいことにこだわる日本流でやったみたら
どうなんのやろ? 下手でもちょっとましになるんとちゃうやろか? 馬子にも衣装と
言うやないか?
ということで絵絹の板貼りドーサ引きに挑戦してみることにした。
日本流にやったら果たしてどんな絵ができあがるやら楽しみでもある。
というてもどうしたらええんかようわからん。
ようしたもんでネットで検索したらいろいろ出てくる。画一的でないのが又
面白い。適当に取捨選択してやってみるしかないようだ。そのうち自分流が見つかるやろ。
とりあえず、木枠が必要だ。
其の辺にあった棒きれで作ってみた。もひとつ気に入らん。適当に棒切を選んだのが
あかんかったみたい。板材を買い直すか、それより既製のキャンバス貼り用の枠を
買うたほうがええんとちゃうやろか?
ということで画材屋さんに買いに行った。今回は小さい絵を描きたいんでF3用だ。
作品がF3やと枠は3サイズ大きくF6が丁度ええみたい。バラしたやつを買ってきて
家で組み立てると運びやすい。
後はこれに絵絹を貼って乾かす。
枠に合わせて絵絹を切る。裏表と方向が大事だ。絵の縦方向に絵絹のロール方向を
合わせる。(伸び縮みの関係で織り方向を合わせるのが大事だという)
それと、ロールした絵絹の内側が表なのだそうだ。
先に枠に捨て糊と言うて糊だけを刷り込んで乾かしておく。
(さしたる意味はわからんけど、そうしておく)
乾いたら絵絹をおいて、ピンかなんかで止めて、弛まんように周囲に糊をつけていく。
不思議なことに糊は絵絹の上からこすりつけるのだそうだ。
信じられへんかったけどやってみたらうまくいった。
因みに糊は、麸糊って書いてあったけど裏打ち用の和糊を使った。
こんな感じになる。
少々にシワは気にせんでええと書いてある。わしは気にしたほうがええように思った。
それで乾かす。 十分に乾かすのが大事そう。
乾いたら今度はドーサを塗る。
ドーサっていうのは膠液を薄めてちびっとミョウバンを入れたやつだ。どれくらいに
薄めるかは極めて適当にやった。
何のためかと言うと、墨や絵の具の塗る時の滲み止だ。水墨画は滲んだ方がエエ場合が
多いし、わしは其の方が好きなんやけど絵絹の場合は滲んだらボコボコになるんで
ドーサを引いたほうが綺麗に絵が描けるとおもわれる。
これも腕前次第やろけどね。
で、とにかくドーサ液を塗る。ドーサ液が行き過ぎて糊の上に乗って糊が剥がれたら
意味がないんでマスキングテープを貼っておく。手元にそんなええもんはなかったんで
たまたま目についた養生テープで代用する。
因みに塗るではなくて引くという用語にも意味があるのだそうだ。これもようわからんけど
引くようにさっと塗るということなんやろか? 因みに裏打ちをするときの打つという
用語にも意味があるそうで、動作にふさわしい用語が当てられてるんやろけど理解する
ほうが追いつかへん。
それはともかく、表にドーサを引いて1日乾かしたら、裏にドーサを引いて乾かす。
その次は又表にドーサを引いて乾かす。
なんとも準備に時間がかかる。
さて、準備完了。若干縦じわがふわふわとあるけどまあ気にせんとこう。
さて、描き始める。
今更力んでもしょうがないんで適当に描く。
なかなか描きやすい。
しかし戸惑いもある。普通、画仙紙やったら筆を下ろすだけで自然に滲んだり
濃淡をつけたりぼかしたり簡単にできるけど、ドーサを引いてると、結構テクニックが
要りそうだ。あいにくテクニックの持ち合わせがないんで適当にやる。
とりあえずできた。
まあ、こうして描くのも面白い。
しばらく色々やってみよう。
枠から剥がす時も慎重さが必要みたいだ。
糊が着いた部分にお湯に軽く浸してしぼった布をこすりつけてしばらく置いておくと
糊がふやけて剥がれやすくなる。それをそっと剥がすと綺麗に外れる。
所定の寸法に切り取ったらそれで完了。
後は絵の技量を磨くだけ。
精進、精進。
殆ど誰にも興味ない話でした。お疲れさん。
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ありがとうございました。