九度山暮らしのある日、備え無ければ憂いあり、台風21号の時の話。

九度山暮らしのええとこはわりと災害が少ないとこやなあって思ってた。今まで大きな
地震もなかったし、台風も大したことなかった。そやからいつのまにか緊張感が緩んで
非常食や懐中電灯や水、ラジオなんてもので万一に備える気分が薄れてしまってた。
先日の台風21号は第2室戸台風以来の強烈なやつというのが来る前から大きくアナウンス
されてた。
そういえば子どもの頃、台風が吹き荒れた時、板を打ち付けたはずの雨戸が風の力に
負けそうになって家族みんなで内側から押さえてたと言うのはもしかしたら伊勢湾台風
か台風15号か、はっきり記憶にはないけど終わって外にでたら納屋が倒れてるは、
道路の電柱は倒れてるはでえらいことになってたけどあれが今まででいちばんきつかったと
すると今回はそれ以上になるんかもしれん。
楽しみにするわけではないけど、来るのは避けられんみたいやからジワッと襲来を待つ。
後から思えば事前になにやら準備することはあったんやろけど、危機感はまったくなく
もう既に風が吹いてきた。
大分近づいてるとはいえ最初の頃ややら北風だ。音がやたら大きい。それだけでビビって
しまう。しかも台風独特の間欠的な吹き方。止まったと思たらゴーっと来る。
それでも音がすごいだけで家の窓から見る限り木の枝がなびいてるくらいだ。
面白いことに時々、鳥が飛ばされてる。
やっぱり鳥でもこんだけの風が吹いたら、意に沿わない滑空をせんとあかんのやろか?
それとも風に乗ったらがんばらんでもピーッと飛べるって楽しんでんのやろか?
そのうち風がだんだんと東から東南に向きを変えてきた。
勢いも増してきた。竹やぶがビュービューしなってる。
時々ガリガリメキって音がするのはどっかの家の納屋のトタンがめくれかけてるんやろか?
ネットで見てるともうすでに台風は上陸したようだ、風向きは殆ど南に変わりつつある。
わしの家は南側が弱い。どうなるんやろ?
家の外の槇の木に風が当たり始めた。玄関のガラス戸にもガンガン風が来る。
もしかしたらヤバイんとちゃうやろか? 隙間から雨水も入ってくる。
テラスは大丈夫やろか?
槇の木の列にはまともに風が当たって大きくしなってるけど、その間をすり抜けてくる
風は意外と少ない。なるほど防風林の役を果たしてる。折れそうなほど風を受けて
たわんでるけど耐えていて風は抜けて来ない。
大したもんだ。
この間に、大阪、和歌山で木が倒れたり、電柱が倒れたり家が壊れたり、えらいことに
なってたらしいけどそんなことは露知らずだ。
そのうち電気がバシッと消えた。
そのうち点くやろって高をくくってる。
だんだん風ちからがわずかずつ弱くなってきたのがわかってきた。それでも油断はできへん。
ときどきビュビュッと来る。そのうち、そのうちっておもってた電気が一向に点かへん。
時間が経つにつれてさしもの暴風も収まってきた。
でも、この間に近畿ではえらい災害になってたのだ。関空が壊滅的になってしまった。
広範囲に停電してる。屋根が飛んだ。看板が飛んだ。
わしらの被害なんて微々たるもんだった。
この時点ではそれがわからん。まだ電気はつかへん。
そろそろ夕方近い。さすがに焦ってきた。夜なっても駄目って覚悟せんとあかん。
うちはガスやなくて電気で炊事してるんで飯にもありつかれへんということだ。
懐中電灯代わりにろうそくはあるけど、食いもんと懐中電灯くらいは買いに行こう。
泥縄とはこのことで、隣町まで車で出ると電気がバッチリついてるし、店も開いてる。
買って戻ったら、すでに町中真っ暗になりつつある。
さっそく蝋燭を点けて見る。

和蝋燭だ。和蝋燭の炎がとてもエエ感じとかいう話に、すっかりその気になって
買ったやつだ。確かにエエ感じではある。しかし、こういうときにはとても
侘しさがつのる。バシッと電気が点いた方がええし、LEDの光でも明るいと安心感が
ある。陰翳がええというても今では、明るい暮らしがあってこそのもんやと思うと
エエ気になってたもんやと反省する。
そういえば、「陰翳礼讃」を書いた谷崎潤一郎も実際の暮らしでは洋風の明るい
生活を好んだと新聞に書いてあった。ホンネとタテマエを知らずにその気になったら
あかんのだ。
窓から外をみても町の中は真っ暗、遠くにみえる役場では1室だけ明かりが目立つ。
あれは自家発電で緊急対応を協議してはるんやろ。町の中が暗いんも寂しいもんや
なあって思いつつ、飯も食ってしまうと何もすることがない。
酒でも飲むかとちびちびやってたら電気が点いた。
なんとありがたいことか。
それにしても最近は事あるごとに身近に災害が起きる。あんまり軽視せんと
それなりの備えをしとかんとあかんなあって痛感した。
喉元過ぎたら又熱さを忘れるんやろか? それはいかん。

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ありがとうございました。