映画、「タンゴ・イン・ブエノスアイレス」

映画、「タンゴ・イン・ブエノスアイレス」を見た。

2003年にブエノスアイレスで開かれたタンゴフェスティバルの模様を中心に
演奏者や踊り手を追いかけたドキュメンタリーということだった。
ファドとフラメンコの世界と同じように、やり場のない怒りや哀しみ
つまり世の不条理のようなものを、
歌にして踊りにして、全身から迸らせているかのようだ。
しかも、タンゴという踊り。
男と女が見つめあって抱き合って、狂おしく、情熱的にしかも一分の
狂いもなく躍る姿は、男と女の実体の愛の営みよりも美しく官能的かもしれない。
そして、バンドネオンの哀しみ。ギターの嘆き。
バイオリンのすすり泣き。
あまりにも暗いけど、引きずり込まれるものがある。
年をとればとるほど、かっこいい世界を見せている。
声が美しい。姿が美しい。
しかし、芸術って、常に新しく再生しながら生き続けていかないといけない
宿命があるので、伝統を守ることと壊すこととジレンマにいつも
たたされつづけていると思う。
いつまでも、そのままでいいわけもないけれど、安易なモダニズムにも走って
欲しくはない。
ブエノスアイレスも一度は行って見たいところだなあ。
それにしても遠いけどね。

eiga090115

毎週木曜は映画、音楽、書画に関する話です。