文楽、「妹背山女庭訓」に行った

ずっと前に和歌山、粉河町の近くに行った時、あのへんに妹山、背山があるは
ずやんと言う話をしていたら文楽、歌舞伎にも「妹背山女庭訓」と言う話があ
ると聞いた。ほうどんな話やねんと興味を持ったが、奈良にも妹山、背山があ
るらしい。こっちは紀ノ川をはさんであっちは吉野川をはさんで歌枕になって
いるところだ。「妹背山女庭訓」の内容は、川を挟んで対立する豪族に若い男
と女がいて、お互いに恋仲になる。ロメオとジュリエットみたいな話があって
悪の権化たる蘇我入鹿のために結婚はおろか心中すらできないで川を挟んで別
々に死んでしまう。あまりの悲劇を悼んで両家はついに和解する。
そういう話が前段にあるらしい。
今回はその後の話だ。
悪玉、曽我入鹿を藤原淡海(藤原不比等)がとうとうやっつける時期が到来し
たのだ。
しかし淡海は忙しい。政治の企みの間に恋もしないといけないのだ。
しかし文楽の世界でも、いい男は恋に不自由しないのだ。登場するお姫様も、
村のお嬢様も恋が大好きなのだ。
あっちでいちゃいちゃ・・、こっちでひそひ・・、どっちでもええようにやっ
ているうちにどっちもにっちもさっちもいかなくなる。
「私の大事な人、どこへも行かないで・・・」
「あらこの人は私のものよ。あんたなんかどっかいってよ・・」
「何よ、あの時あんなに硬い約束したのに・・」
「あんたなんかしょせん身分がちがうのよ・・」
なんとかかんとか、女の戦いはおさまらない。
とっくみあいまで始める始末。
こんなの人形でやるなんてすごいなあ。

bunraku130812

それでも姫は帰らなならん。男は姫の袖に糸を結んで・・恋の苧環からからと・・
男は姫を追う。
娘は男を逃がすもんかと、また糸を結んで・・・こちらも苧環からからと・・
糸を手繰って手繰って、舞台は入鹿の屋敷に。
事情がわかった男は我が事成れりと思う。
事情がうすうすわかってきた娘は、絶望しかないと思う。
その時いきなり娘は、殺される。
入鹿を滅ぼすには爪黒の鹿の血と嫉妬深い女の血が必要なのだ。
お前の血は恋人の役にたったぞと褒められる。
それこそ本望って女も納得する。
「なんで?・・・・」、そんなんわしは納得できへんやんか。
そんな理由でいきなり殺されて、褒められても、わけわからん。
娘がかわいそうすぎるやんか。

この話なんとなく無理がある。
悲劇というよりようできた喜劇と思ってみるほうが気がらくだ。
それにしても、歴史を紐解いたら悪逆非道、やりたい放題はどっちか言うと藤
原氏の方やんか。判官びいきの関西人にとってはほんまは蘇我入鹿の方をええ
もんにした話をこしらえて欲しかったなあ。

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ありがとうございました。