この作者の「プラハの春」を読んだ事がある。東西体制崩壊前の頃のチェコ
ドイツ国境を舞台にしたスパイアクションも入った推理小説で、元外交官
だったという著者の専門知識がふんだんに入って面白い本だった。
こんどは、今話題の中国でも西の果て、ウルムチが舞台だ。
トルキスタンの独立運動の志士も出てくる。大分前の本なのに全く今現在
起こっている事のようだ。あの地にはそれだけ長く根が深い問題を抱えて
いるのだろう。そして、隠された原爆実験の地でもあった。
そして舞台は9.11直前のアメリカから上海へと移っていく。
青幇、法輪巧の裏組織、中国の一党独裁の腐敗など、まさにいまもって
リアルに思える中国の話だ。
上海の里弄を舞台にしたアクションも面白い。
映画にしたら楽しいだろう。
外から見た中国という印象でもああるが、巨大な国がずっと抱えて続けている
問題を考えさせられる作品だ。
徳齢、「西太后汽車に乗る」
実に興味がある内容だ。
浅田次郎の「蒼穹の昴」シリーズに英語、フランス語を自由に話し、
アメリカ人の新聞記者とつきあっている西太后の姪が登場するが、多分この
作者がモデルではないかと想像される。
西太后の姪でアメリカの外交官と結婚した人だそうだ。
その人の思い出し話として書かれた本だ。
西太后の一面が如実に現れた愉快な話だ。
急に思い立って、瀋陽(当時の奉天)にある、清朝発祥の故宮に行幸する事
になる。早速お召列車が仕立てられた。
落ちぶれかけたとは言え、大帝国の皇帝の移動だ。
列車の中とは言え1回百皿の帝王料理。竈だけの専用車両があって、
50台の竈が並んでいて、それぞれに料理人がついている。
着替えとなれば、これまた専用車両から運んでくる。
おつきの人は横になっては眠れない。
北京から天津、瀋陽へと実にゆっくりゆっくりと進んでいく。
帝王は気難しい。まわりはてんやわんや。
こんな時代もあったのだ。
毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。