温又柔、「台湾生まれ日本語育ち」
滅茶苦茶面白いわけでもないし、波乱万丈でもないき、奇々怪界でもないし、
起承転結の起伏が激しいわけでもないけど、ついつい先を読んでしまう。
読んでいてとても優しい気持ちになれる本だ。
家庭の中で、ごく普通に、ごく自然に、台湾語で喋ってるかと思ったら、中国語に
なってたり、ある時は日本語になってたりとそういうのがごく普通にあるのが
台湾なのだそうだ。ごく普通の家庭でも台湾語と中国語は当たり前のように
混ぜ混ぜで喋られるし、日本統治時代に日本と関係の深かった人や、そうでなく
ても日本や日本人と関係の深かった人が家庭にいるとこれに日本語が加わるのだ
そうだ。
なんと素晴らしい。わしらは子供の頃から殆ど外国人と接することはなかった。
そのせいかどうか、中学校に行って英語を習い始めたところで唯の勉強の一科目、
コミュニュケーションの手段として考えたこともないし使えたことも勿論ないと
いう日本人が圧倒的だと思う。素直にかっこええなあって思う。
現実はそんなええことばっかりではないのは明らかだ。
いろんな暮らしの中のいろんな悩みや歪みも淡々と語られる、とても心地よい
エッセイ集だ。台湾総統選挙の話、台湾海峡、馬祖の話、とても良い。
望月諒子、「大絵画展」
これは、ある知り合いの方に教えていただいて早速図書館に予約した本だった。
映画や本や、いろいろ情報を教えていただける知り合いがいるのはありがたい。
いやあ、実に面白い。とても良い本を教えていただいた。
ある時、ロンドンの有名なオークションでゴッホの名画、「医師ガシュの肖像」が
競売にかけられた。第二次大戦後正規の持ち主を巡って数奇な運命を辿った曰く付き
の絵画だ。なんとそれが、日本人の実業家に落札されたのだ。そのオークションを
代理で勝ち取った謎の日本人の男とは一体だれなのか?
そして、絵画はまた数奇な運命を辿るのか?
持主の会社の破綻と共に名画はまた闇の中へ。
そして、謎の男を巡って、あるいは今はわからない何かを巡って、事件が次々と
起こっていく。
なんとなく暗くて陰惨な話になりそうな予感がして読むのをやめようかと思っていると
事件は意外な展開を迎える。
ここからがとても面白い。何もかもが一気につながっていくかのようだ。
果たして、絵画はどうなるのか? 絵画をめぐるひとたちはどうなっていくのか?
そして意外な結末も。
確かに、割と安易なミステリーのようでもある。しかし、絵画の価値ってなんやろ?
たかがゴッホ、されどゴッホ、それで何十億円か?
あると思えばある、ないと思えばまったくないかもしれへん価値?
しかし、本物を見れる人にはそれがわかるのか? その魔力とは?
金なのか? 絵の力なのか? 価値のわからんもん同士でゲームが成り立つのか?
色々考えるととても楽しい。
ブログランキングに参加しています。もしよかったらポチンとお願い致します。
にほんブログ村
ありがとうございました。