遅子建、「今夜の食事をお作りします」
思わず胸がキュンとなるような悲しく切ない話であり、哀れを誘う話であり、
ユーモアたっぷりの話でもある。いずれにしろ心に沁みる話が多い。
もう大分前になるけどネットで何かの情報をググってたら、中国でもオーロラが
見えるとこがあるという情報があった。そのあたりには民宿があって、中国人の
旅行者に大人気なのだそうだ。是非一回行ってみたいと色々調べて見たんやけど
結局ようわからへんかった。
それが黒竜江省漠河県北極村 というところだった。
この小説の舞台になっているところだ。
なるほどこういうとこやったんかと実によくわかる。其の地の厳しく貧しい暮らしが
目の前に立ち上がってくるようだ。
夫がその村に役人となって居を定めたらしい。家を売って引っ越してこいという
連絡が入った。女は1壼のラードと家を引き換えて子供を連れて旅にでる。
考えられへんような過酷な旅だ。
上質のラードは漲る力を生み出す。子供もできた。そしてある日、壺の秘密がわかった。
夫と妻の心はとっくに冷え切ってしまったのだろうか? 夫はこれみよがしに他の女
との逢う瀬を楽しむ証拠を残して居なくなる。妻はいたたまれない。どうやって見返して
やろう?
1人で街にでて見知らぬ街をふらつきあるく。そして、「今夜の食事をお作りします 」という
貼り紙に応じた男の家に行って飯をつくる。
なんと哀しい。
そして、何かが起こる。そして、本当の事が分かって来る。
そして、取り返しのつかないことが。
短編集
ラードの壺
七十年代の春夏秋冬
割り木の暮らし ロシア人の老婦人
今夜の食事をお作りします
プーチラン停車場の十二月八日
ドアの向こうの清掃員
ねえ、雪見に来ない
黒竜江省漠河県北極村 、川の向こうはもうロシア人が暮らす土地だ。
オロチョン族の村でもある。
じっくりと読める良い本だった。
小嵐九八郎、「我れ、美に殉ず」
ある日、偶々テレビを見てたら久隅守景の特集をやっていた。
この人の夕涼みの絵は大好きやけど、四季農耕図みたいな絵も描いているようで
それがとても気になった。しかし、詳しいことはようわからへん。ネットで色々
調べてるうちにこの本に行き当たった。
どんなんかようわからんけどまあ読んで見よう。
久隅守景、英一蝶、伊藤若冲、浦上玉堂の4人の数奇な人生を描いた本であった。
久隅守景
狩野派の塾頭でありながら、人生の巡りが悪く、破門の憂き目に、そして異端に走る。
そんな絵がええんよね。
英一蝶
将来を嘱望されながら、己のおごりか、運の悪さか時の権力のお咎めを受けて島流し、
それでもええもんはええ、誰かが分かってる。
伊藤若冲
今や誰でも知ってる京都の錦市場の八百屋の跡取り、しかし、ゲイと設定するか?
浦上玉堂
藩のえらいさんでありながらかぶいてしまった男、七弦琴と絵筆片手に放浪の絵師に。
かっこええなあ。
話は結構面白いし、もう少し深く突っ込んで見たくなるけど、この作家の文章表現が
もひとつ好きになれへんのはわしの理解不足か。
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ありがとうございました。