和歌山県の海南市は、父親の仕事の関係で子供の頃から何度か住んだ事がある。
実家を出て、学校に行き、就職をして最後の実家の場所も海南市だった。そや
から海南というはわしにとっては故郷と言っても良いところだ。
一番子供の頃海南に居たのは野上町というところだった。海南市から山の方に
行ったところにある。昔は野上電鉄が通っていて、ちんちん電車に乗って行き
来する、良い時代だった。その野上町というところは今から思えば棕櫚の産業
が盛んだったらしい。棕櫚の箒やタワシを作る家も沢山あったし、棕櫚の木も
あちこちで見かけた。棕櫚の町なんやなあって漠然と思ってた。
それから何十年も経って、急に箒が必要になったんではたと思い出した。
どうせ箒を買うんやったら故郷に縁がある野上の棕櫚箒にしたい。ネットで調
べてみたら今や棕櫚箒を扱う店はほとんど無いようだ。しかも通販ばっかり、
どうせなら手にとって選んでみたいんでわずかに残った山本勝之助商店という
会社に卸し専門やけど店頭販売も可という言葉を頼りに電話してみたら快く、
来下さいというお返事をいただいた。
店に行くと、棕櫚箒と言うてもいろいろあるらしい。
普通の棕櫚の皮を使ったやつと、鬼毛というやつだ。
どう違うかというと特別に太くて長くてしっかりした皮を選んでそれを叩いて
ほぐした上等の繊維のやつだという。
そら、ぜんぜんちゃいまっせ、まあ使ってみてと言うから、お店の三和土の土
間を履いて見た。
ぜんぜんちゃう。鬼毛はしっとりしてすすすっとすべるように掃けてしかも、
しなりがあるんで力が入り易い。普通のやつとはモノが違う。
しかも7玉と言うて房が7つあるやつと9玉とはこれまたえらい違いだ。
値段は相当高くなるけど触ってしまうとやっぱりこちらが欲しくなる。
ついでに庭用には安い方を買って行こう。
帰って使ってみたらやっぱり使い勝手がとてもいい。
棕櫚の皮は油分を含んでるんで板の間を掃いてるといつかワックスをかけたか
のようになってくるという効果もあるらしい。
いつまで使うかわからんけど先が楽しみだ。
山本勝之助商店というのは、「かねいち」と言う屋号で明治13年から、山椒
や棕櫚など山の物といって山からとれた家庭用品を扱い続けている店らしい。
こういうお店がまだ残っていて良かったと思う。
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ありがとうございました。