最近読んだ本、「若冲」、「西太后 上」

  • 2016年5月9日
  • 1人
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澤田瞳子、「若冲」
伊藤若冲、奇想の天才、異能の画家、今では知らぬ人とていない画家やけど、
プライスコレクションが日本に来て話題になるまでは殆ど誰も知らなかったん
ちゃうやろか? わしも知らなんだ。知る人ぞ知るだけの画家を、発見、発掘
して光を当てたのはアメリカ人のジョー・プライスという人だ。
ある日アメリカの骨董屋さんで、若冲の葡萄の絵を気に入って買ったのが始ま
りですっかり若冲にはまってしまってコレクションを始めたのだそうだ。
彼は絵を買うとき落款とか来歴とか真贋とか殆ど調べないのだそうだ。その絵
が彼の心を打つかどうかで決めるという。すばらしい鑑識眼であり、素晴らし
い審美眼の持ち主だと思う。こういう人がどこかの蔵に埋もれて灰になってい
く運命の名品を掘り出して世に送り込み、新たな有名画家が誕生するのだ。
しかし若冲の生涯は謎が多いらしい。
京都の錦市場に行くと、若冲の生家跡という看板があるけど、裕福な青物商の
跡継ぎに生まれながら、家業を放り出して絵ばっかり描いていたとか、大徳寺
の和尚に気に入られ、その庇護と応援を受けて絵で身を立てることができるよ
うになったとか、そんなぐらいしかわからへん。何故あんな強烈な構図と超絶
技巧が生まれたのか、何が彼をそうさせたのか、同時代には池大雅、円山応挙、
与謝蕪村、谷文晁など有名な画家がいたのにどういう関係があったのか、交流
があったのかなかったのか、さっぱりわからへん。
誰か、若冲の生涯を小説にしてほしいなあって思っていたら、この本を見つけた。
とても面白い。
ほんとかどうかはわからへん。しかし、いかにも若冲らしい人が生き生きと立
ち上がってくる。
京の都の裏通りの町屋にひっそり住んで、ストイックに鶏と絵をにらんでる
けったいなおっさんが目に浮かぶ。
さて、何が彼を奇矯な絵に駆り立てたのか?
行き着く先はなになのか?
面白い。

hon160509-1

ユン・チアン、「西太后」
一番最初に北京の頤和園に行った時は、時ならぬ大雨の日だった。友人と
2人タクシーでやっと辿り着いたけど、あまりにも酷い雨やったんでもし
無理に見学しても帰りのタクシーが捕まらんやろから下手したら帰られへ
んようになるでという事で涙をのみつつ門前でひき返して。帰りの道は道
路が冠水して大変だった。雨はやまず、どんどん冠水は大きくなって、と
うとう車のシートに入りそうなくらいの深さまできた。まわりの車はどん
どんストップし始める。運ちゃんはそれでもがんばる。わしらも体に力が
入るけど、応援しかできへん。皆で息をつめながらやっと一番深いとこを
通過した。あとはなんとかしのげる。ホテルに着く頃にはエンジンの音も
やばい感じになってきた。気の毒やけどそれについては責任は持てん。
運賃以外に少しチップを載せてさようならさせてもらった。
後日、頤和園を再訪した。こんどは晴れの日だ。
中に入ってとても驚いた。
自然の景観を利用して、巨大な庭園を造ったりするのは良くある話やけど、
ここは総てを一から造成した超巨大な創造物であった。
庭園の中に人口の山がいくつもあるし、寺もあれば宮殿もあれば観劇の劇場
もある。なんと湖まであるではないか。
それを創ったのが西太后だ。
西太后の話は何冊か読んだ事がある。殆どが極悪人だ。
身勝手で欲張りで独裁者。戦争の為の国費を流用して頤和園の修復をした。
西欧列強に欲しいままにされた。旧態依然の宮廷政治にしがみついた。
あげくは清朝を滅ぼした。
等々だ。
しかい、この本の視点は違うようだ。
近代中国の創始者とある。
定説に流されずにいろんな資料を調べて、真実が浮かび上がるよう研究したよ
うで、内容には説得力があるように思う。
この作家は、あのベストセラーになった「ワイルド・スワン」を書いた人らしい。
(因みにワイルドスワンはとても面白かった。)
読んでいる内に新しい西太后の姿が立ち上がってきた。
これは全部読むのが楽しみだ。

hon160509-2

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ありがとうございました。