古本屋で見つけた本だ。一冊350円は安い買い物だと思う。
新しい本もいいけれど、古い本を通して昔を思う時も必要だ。
高柳芳夫、「プラハからの道化たち」
プラハ、ブタベスト、ウィーンの旅に行ってからもう数年以上経つ。
その頃のプラハの街のキーワードは「プラハの春」コンサートだった。
東西関係に雪解けが来て、ソ連の崩壊があって、「プラハの春」があって、
「モルダウ」を楽しく聴ける時代が来たのだ。しかし、古い城壁には
銃弾の痕が痛々しかった。チェコはドイツに国境を接している。
今では、週末には、ドイツから沢山の人が来て、観光に来たり、安い
農作物や工芸品を買いに来たり、果は女遊びに来たりするというのが
当時の話であった。この本の舞台は、もっと前、ベルリンにも壁が
あった頃の話だ。ソ連にもドイツにも国境を接する弱小国の悲劇を
引きずったチェコの状況とその頃の東西緊張が引き起こしてきた幾多の
物語の一つが、推理小説の形で、悲劇ではあるがリズム良く語られている。
ポール・ニザン、「アデン・アラビア」
「僕は20歳だった。
それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
1歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。
恋愛も思想も家庭を失う事も、大人たちの仲間に入ることも。
世の中でおのれがどんな役割を果たしているのか知るのは辛いことだ。」
あまりにも有名で美しい冒頭の言葉だ。
これを、読む為にだけ買ったようなものだ。
しかし、難解な本だ。こんなに年をとってもやはり難解だ。
当時の世界の状況は、ヨーロッパで大きく捩れていたと言えるだろう。
それを、渦中にいるよりは、アジアの視点で見てみようと、アデンまで
来て見たが、アジアからの視点も何の解決にもならず、帰らざるを得ない
のだった。この人の怒りが今となっては心に入って来ない。
毎週火曜は、最近夢中で読んだ本の話です。