原田マハ、「暗幕のゲルニカ」
この人の本は出るとすぐに読んでしまう。文学的にどうこうというよりは、
いつも好きな芸術家が主人公やし、元キュレーターとしての知識や想像力を
駆使して人物像を生き生きと造り上げているんでついつい引き込まれて行く
のだ。
前にフランソワーズ・ジロー、の「ピカソとの生活」という本を読んだ事がある。
ピカソと暮らした沢山の女性の中で唯一ピカソを自分から振った女性という人
の話だ。奔放な芸術家との濃密な暮らしが緊張感たっぷりで描かれていてとても
面白かった。
ここでは、ピカソの「ゲルニカ」がテーマになっている。ピカソがフランコ軍
のゲルニカ爆撃に抗議して描いた反戦の大作だ。
彼がなぜこの作品を描いたのか、どんな芸術の背景があったのか?、どんな生活
の背景があったか? その時一緒に暮らしていた女性は誰なのか? その女性の
口を通してその詳細が浮かび上がるのだ。男と女の愛憎劇、それ以外に実は彼女
は写真家なのだ。「ゲルニカ」の制作過程がつぶさに写真に撮られていた。
そんな事があったのか? 知らんかった。是非見てみたいなあ。どんな順番で
描かれてどんな風に変わっていったのか? それが何故かって考えると絵を描く
とても良いヒントになると思う。残念ながらその詳細はこの本の主題ではない。
と言う女性がいる。MOMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターでピカソ
の専門家だ。折しも彼女が企画したピカソの展示イベントがMOMAで採用されそう
になっている。
そんなときに突然、あの9.11が勃発した。
MOMAの理事長、ルース・ロックフェラーはその企画展は反戦のメッセージを発信
することが是非とも必要であると瑤子に厳命する。
瑤子もその企画を成功させねばならない、ピカソでならない訳がある。
ならばゲルニカが・・・・。
元々、ゲルニカは長い間MAMAに保管されていた。
何故か? どういう経緯なのか?
ドラとピカソとMOMAを繋いだ人がいるらしい。
スペインの元貴族、パルド・イグナシオだ。
パルド・イグナシオとルース・ロックフェラーはどうつながる?
ドラとピカソと瑤子の時空がすこしずつ縮まってくる。
瑤子はこれからどうなる。事件に巻き込まれるのか?
ピカソ展はどうなる? ゲルニカは?
とても面白い。波瀾万丈のサスペンスでもあった。
イーデン・フィルポッツ、「守銭奴の遺産」
これはとても異色の推理小説だ。最初は異色というのがわからなかった。
しかし、読んでるうちにちょっとずつちょっと違うなって思うようになって、
最後にこれが異色やったんかってわかるようになる、そんな仕掛けなのだ。
ジョン・リングローズは引退した元名刑事、彼が謎解きの主人公だ。妹のメイベル
と共に田園生活を送っている。彼女の料理はとても美味しいそうだ。
ジョゼフ(ジョー)・アンブラはロンドン警視庁の警部補、ジョンをとても
尊敬していて彼のアドバイスを聞きながら事件を解決するというのがこの物語り
なのだ。
ある日、有名な高利貸しで誰からも嫌われているジャーヴィス・スワンと言う
男が死体で発見される。しかもそこは完全なる密室だ。用心深い被害者が設けた
分厚い防犯設備の部屋の真っ只中で倒れていたのだ。
誰が? 何故? 何時?
捜査が始まる。
動機のありそうな人間は沢山いる。弟のマーティン・スワンはどうだろう?
甥のレジナルドは? 姪のジェラルディンは? 彼らは遺産を得るではないか?
では献身的な秘書のボルゾーヴァーはどうだ? かれは外国人、素性が妖しい?
しかし、遺産を貰うはずが辞退してる。
住宅の管理人は? その娘も怪しい。
しかし、調べる内に又、殺人が?
いよいよ混迷する。
一番怪しい人間にアリバイがしっかりとある。
さて、犯人は誰だ? 意外な人間ではないのか?
動機は?
異色さがとても面白い。
田園生活も楽しそうだ。
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ありがとうございました。