谷崎潤一郎、「瘋癲老人日記」
この本、話題になりながら実際は読んでいなかった。
谷崎は、感動する本が沢山あるので、とても全部よみきれない。それで
全集本まで買っておいてあるが、全部読み通す機会がない。
しかし、この本は、棟方志功の版画で装丁されているのが目についたので
買ったのだ。
志功の板画は内容を端的に捉えて大胆に描いているのがすばらしい。
この人にとっては女は菩薩なんだなあ。
それにしても、谷崎潤一郎の描写力ってすごいと思う。
女性への想い、愛とか恋とか表面的なものではなくて、手とか足とか
しぐさとか、微妙なものの形をかりて、変質者のように装いながら
実は、こだわりの想いを克明に描き出して行く。
その表現の方法は、美意識の最たるものかもしれない。
さて、高価な宝石の代償に、女のたれおちる唾の一しずくをいただいた
瘋癲老人はどうなるのでしょう。
陳舜臣、「小説十八史略、傑作短編集」
高校時代に学校の図書室に行くと、元藩校だった関係で漢籍が沢山おいてあった。
ちょうどその頃、漢文に興味があった時期だったので、いろいろ借り出した
読んだ記憶がある。その中で記憶にあるのが、「資治通鑑」であった。
中国、北宋の司馬光が紀元前の頃から書き起こして、北宋前までの歴史を
綴った所謂正史である。
読めるはずもないが、漢字がならんだ中に、それなりに知った単語を発見するのと
返り点、一、二点など符号が打ってあって、想像できる部分もあって、
一生懸命雰囲気に浸っていたものだ。
十八史略は、こういう正史からとって、解り易い話本にしたものだろう。
陳舜臣には、大部の翻訳本があって、多分、部分的には読んだ事があるが、
もう忘れてしまった。
今、これを読み返すと、中国で有名な人物がどう活躍したか、かいつまんで
解説されているので、新たな興味が湧いてくる。
中国の旅も知っていくのと知らずに行くのとでは大違いだから、知識を
仕入れておかなくては。