最近読んだ本、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」、「ビニール傘」

  • 2017年9月27日
  • 1人

ローズ・トレメイン、「音楽と沈黙Ⅰ、Ⅱ」
ある日、ピーター・クレアという美貌のリュート奏者がコペンハーゲンにある
ローセンボー城にやってきた。デンマーク王クレスチャンに雇われて、彼の楽団に
参加して演奏するためだ。王の居室には奇妙な仕掛けがある。その地下で楽団が
演奏すると複雑な伝声管を伝ってその部屋で音楽が聞こえるという仕組みなのだ。
王はその仕組みがいたくお気に入りで、そのため楽団員は暖房の無い地下で震え
ながら演奏をしなくてはならない。
一方王の妻、正式な妃ではない、キアステンは恋多き女性だ。淫乱と言っても良い
ほどだ。王の隙をみて愛人、オットー伯爵とやりまくっている。
しかし、キアステンにぞっこんの王はまだ気がつかない。彼女の気を惹くのに
必死だ。
そして、ピーター・クレアには昔の想い人がいる。オフィンガル伯爵夫人だ。
しかし、何時の頃からか、キアステンの侍女エミリアに想いを寄せるようになった。
さて、舞台は出揃いつつある。
事態は段々とややこしくなっていく。
キアステンの浮気三昧が明るみになっていくのか?
彼女はデンマークに居られるのか?
王はどうするのか?
王にも悩みがある。デンマークの経済が怪しくなっている。起死回生の手立ては
あるのか?
ピーター・クレアのリュートの響きは国費改善のための売り物になるのか?
ピーター・クレアとエミリアの運命はどうなるのか?
舞台はデンマークの田舎町のお城に?
あるいはイギリスに?
オフィンガル伯爵はピーター・クレアとよりを戻せるのか?
中世のドタバタ恋物語のようでいてそんなことはない。
長編ではあるけど一生懸命読んでしまう。
現代にある人間模様そのものが立ち上がってとても面白い。

岸政彦、「ビニール傘」
続き物のような、あるいは呼応するもののような、あるいは似て非なるものの
ような、2つの短編に流れる孤独と切なさに胸が痛む。

ビニール傘
ガールズバーに勤めて、あるいは勤めるしか無くて生きてる女の子。
解体屋でアルバイトしながら暮らす若い男。
タクシー運転手との何と言うことのないすれ違い。
美容院勤めの暮らしの中。
全く普通の何と行くことのない暮らしが淡々と綴られる。
どこにでもありそうな大阪の下町の風景。
さしたるドラマチックも起承転結もなさそうな、日々の暮らしが流れて行く。
救いのないような閉塞感が漂う。いつも実を結ばない異性のとの交わり、
孤独だけが心に残る。

背中の月
システム開発の会社に勤める営業マン。仕事からも仲間からも心が繋がらない。
やりきれない孤独と闇を抱えているかのような暮らしをしているのではないか?
彼の心に繋がっているのは妻だけなのか?
妻は生きているのか?
二人の暮らしって?
静で淡々として何の物語りもないようで、じわっと切なく胸を打つ作品だと思う。
普通を普通に描ききる筆の力ってすごいんかもしれん。

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ありがとうございました。