最近読んだ本、「謎とき『悪霊』」、「曽我蕭白」

  • 2013年3月15日
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亀山郁夫、「謎とき『悪霊』」
前に亀山郁夫の翻訳したカラマーゾフの兄弟を読んだ事がある。
今までのドストエフスキーの印象と言うか勝手な思い込みとは全く違った世界
があった。面白くてたまらん大迫力のサスペンスを読むようであった。その後
「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」も読んで、ドストエフスキー&亀
山郁夫ワールドにすっかりはまり込んでしまった。
こんかいは『悪霊』の解説だ。これも確か読んだことがある。世界の名作と言
うことで真面目な読書少年は一生懸命読んだのだ。しかし、えらい難しかった
という以外は殆ど何もおぼえてへんのだった。
この本は本文というよりはドストエフスキーの創作ノートを中心に分析を進め
て行く。
ドストエフスキーってなんというすごい準備をして本を書いているんだろう。
考えに考えた企みに満ちているではないか。
練りに練りあげられた構想のなかから図太くて反社会的な人間や個性豊かな悪
人達があらわれて事件が起き、物語が悲劇に向かう。
あいかわらず亀山郁夫さんの解説もすばらしい。
目の前に『悪霊』が立ち上がってくるかのようだ。
こうなったらその『悪霊』をもいっかい読まないいけないのだ。

狩野博幸、「曽我蕭白」荒ぶる京の絵師
前から、奇想の画家、とか異能の画家、奇矯奇抜、そういうイメージで曽我蕭
白と言う人を見ていた。画集を見ても確かにうまいけど気持ち悪いなあという
印象だった。しかし、最近与謝蕪村を改めて見直したのをきっかけにこの人の
人生というのも気になってこの本を読んで見た。
京都の染物屋の息子に生まれながら、わずか17歳で天涯孤独の身になってしま
った。誰にも頼らず生きていかないといけない。いつしか画で飯を食う身にな
ってしまった。同時代の伊藤若冲が殆ど何の苦労もない障害だったのとえらい
違いなのだ。それでひねくれて異端の画家になったのとは全く違う。
この本の解説を読んでいてもういちど画を見直してなるほどと思った。
確かに奇想であり、異端でもあるが、芸術の正道という意味ではなんらおかし
いところはない。画を描く技術は抜群やし発想もすぐれている。何より画の中
に想いや企みがあふれているところがすごい。ただ単にその当時の画壇の主流
の画とは全く違っていただけなのだ。それでもそういう画を注文して描かせる。
描いた画を買う人たちが居たというところが日本の文化のすごいところだった
のだと思う。それでも主流でない画はいつしか埋もれてしまう。それを発見し
たのは明治以降の外国人達だったのだ。それほどの芸術性を持っているという
のがすごいのだ。

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