中野美代子、「塔里木(タリム)秘境考」
この本も杭州にいる間に読もうと思って買って来た本だ。非常に面白い。
まず舞台がいい。大好きなシルクロードの真っ只中、ウイグルやトルファンなどの辺りだ。
前にトルファンに行った時に、脳が溶けそうなほど暑い中を高昌故城や交河故城に行った。やけるような
陽光の下に昔の都の残骸があった。土に還るとはこんな事なのか、家があって、家具があって、いろんな
設備があったはずなのに、ゆっくりと何もかもなくなって土だけが残っていくのだ。
そういうところがこの本のなかで、命を吹き返して、そこに住む人たちの暮らしが立ち上がってくるのだ。
ある日、アブリムクは自分が勤めるウルムチ博物館(ここも行ったなあ)で古いウイグルのソグド文字で
書かれた一通の古文書を見つけた。なぜかそれが気になって密かに解読しようとする。
さて古文書にはいったい何が書かれているのか?
突然、事態が動き出す。
いきなり公安に拉致されてしまった。
双子の兄のウスマンの運命はどうなる。
燃える水は見つかったのか?
遠くから見ても近くから見ても同じに見える建物とは何だ。何の秘密が隠されているのだ。
時空を越えて、古のサマルカンドに画師の少年ウィルカークが登場。
彼が描いたベゼクリク千仏洞のマニ経画がいつの間にか仏画に塗り替えられて今日に至るのか?
双子の兄のワヌークが最後まで生き残るのか?
ロプノールの今も水があってウスマンは助かるのか?
過去と現在が交錯する面白い話だ。かの地は今や原爆実験の跡地だ。
その問題がでると、春江一也という人が書いた「上海クライシス」を思い出す。
作者は、「西遊記」の訳者だ。あの時空をはるかに越えた壮大で奇想天外な物語を研究してきたひとだから
こういう素材は自由自在なのだろう。
又、トルファンに行きたくなったなあ。
まだ行ってないクチャやカシュガルにも行きたい。
パキスタンやアフガニスタンの方にも行きたい。
行きたいとこがどんどん膨らんでくる。
まるで時間と空間を旅する旅行記のようだ。
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ありがとうございました。