最近読んだ本、「苦役列車」、「ナイチンゲールの屍衣」

  • 2011年6月14日
  • 7人
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西村賢太、「苦役列車」
これが、超有名文学賞をもらった作品か。
これが、ベストセラーか。
ダメ男のダメ生活ぶりを延々とことこまかく書き連ねている。
さすがに描写力はすごいものだ。どうにもならないやる気のなさ、こすかっらしさ、
うすぎたなさ、吐き気を催す貧乏と頽廃の臭い、いやなもの、はらだたしいものが
いやでも目の前に立ちあがってくる。
私は好きになれないが、この作家の独特のスタイルなのだ。
同じ本に収容された、「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の中のギックリ腰の痛さを
こらえる描写は圧巻だ。
実際に体感してみれがまったくこのとおり、死ぬほどの苦しみなのだ。
私の体感では、
仰向けでも、うつ伏せでも安らぐ姿勢がない。
どんな姿勢になってもしばらくすると体が重だるくなってくる。寝返りを打ちたい
気持ちになるが、その寝返りが大変なのだ。一大決心をして深呼吸をして、えいっと
体をそろっと持ち上げた瞬間、激痛が背中を走る。そのまま脂汗をながしながら
次の姿勢に転げこむ。しばらくはーはーいいながら呼吸を整える。
風邪気味で咳がでたら大変だ。ゴホッとするたびにこれまた大激痛だ。
トイレが又おおごとだ。涙をながしながらじりじりと姿勢を変えていって、やっと
立ち姿まで持って行く。壁伝いにすこしずつトイレに移動して、幸い洋式であれば
用をたすのはまだましだ。こんどはどうやって拭こう。
又激痛をこらえながら・・・・
これは私の経験を書いてみたのだが、こんな内容を微に入り細に渡り見事に小説的に
描写している。
これからどんな本を描く作家になるのだろう。
いつかまた読むことがあるかもしれない。

hon110614-1

P・D・ジェイムズ、「ナイチンゲールの屍衣」
最近、ダルグリッシュ警視シリーズのテレビ番組を見て、結構気に行っていた。
それで、このシリーズの第一作が読みたくなったのだ。
さすが本格推理小説の第一人者だ。いろんな伏線が、理に敵いながらすこしずつ
解きほぐすされて謎がとけていく。
そして、アガサ・クリスティの時代をもう少し近代にシフトさせたような感じで
イギリスの田舎や都会の風景描写が素晴らしい。
病院の看護師の世界、ヨーロッパの複雑な国家事情や戦争にからまる人間描写も
上手だ。
ダルグリッシュ警視初登場の本だから、かっこよさは控えめだが、知的で洗練された
しかもちょっと頑固な中年男性がここにいる。
彼の捜査チームもだんだんと面白くなっていくのだ。
私にとっては安心して読める正統派推理小説と言える。

hon110614-2

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