西村賢太、「苦役列車」
これが、超有名文学賞をもらった作品か。
これが、ベストセラーか。
ダメ男のダメ生活ぶりを延々とことこまかく書き連ねている。
さすがに描写力はすごいものだ。どうにもならないやる気のなさ、こすかっらしさ、
うすぎたなさ、吐き気を催す貧乏と頽廃の臭い、いやなもの、はらだたしいものが
いやでも目の前に立ちあがってくる。
私は好きになれないが、この作家の独特のスタイルなのだ。
同じ本に収容された、「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の中のギックリ腰の痛さを
こらえる描写は圧巻だ。
実際に体感してみれがまったくこのとおり、死ぬほどの苦しみなのだ。
私の体感では、
仰向けでも、うつ伏せでも安らぐ姿勢がない。
どんな姿勢になってもしばらくすると体が重だるくなってくる。寝返りを打ちたい
気持ちになるが、その寝返りが大変なのだ。一大決心をして深呼吸をして、えいっと
体をそろっと持ち上げた瞬間、激痛が背中を走る。そのまま脂汗をながしながら
次の姿勢に転げこむ。しばらくはーはーいいながら呼吸を整える。
風邪気味で咳がでたら大変だ。ゴホッとするたびにこれまた大激痛だ。
トイレが又おおごとだ。涙をながしながらじりじりと姿勢を変えていって、やっと
立ち姿まで持って行く。壁伝いにすこしずつトイレに移動して、幸い洋式であれば
用をたすのはまだましだ。こんどはどうやって拭こう。
又激痛をこらえながら・・・・
これは私の経験を書いてみたのだが、こんな内容を微に入り細に渡り見事に小説的に
描写している。
これからどんな本を描く作家になるのだろう。
いつかまた読むことがあるかもしれない。
P・D・ジェイムズ、「ナイチンゲールの屍衣」
最近、ダルグリッシュ警視シリーズのテレビ番組を見て、結構気に行っていた。
それで、このシリーズの第一作が読みたくなったのだ。
さすが本格推理小説の第一人者だ。いろんな伏線が、理に敵いながらすこしずつ
解きほぐすされて謎がとけていく。
そして、アガサ・クリスティの時代をもう少し近代にシフトさせたような感じで
イギリスの田舎や都会の風景描写が素晴らしい。
病院の看護師の世界、ヨーロッパの複雑な国家事情や戦争にからまる人間描写も
上手だ。
ダルグリッシュ警視初登場の本だから、かっこよさは控えめだが、知的で洗練された
しかもちょっと頑固な中年男性がここにいる。
彼の捜査チームもだんだんと面白くなっていくのだ。
私にとっては安心して読める正統派推理小説と言える。
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ありがとうございました。