ドンバ市場
腹が立ったら腹が減ってきたというわけではないが、フォーというのは、消化
がいいのだろう。朝食べると、昼には程良く腹が減ってくるのだ。
車は元来た道を戻って、更に先、新市街の方に向かって川沿いを下っている。
フォン川だ。広い川だ。フエの街は川の街としても有名だ。
川向こうには宮殿跡のある旧市街が広がっている。
東西に流れるフォン川には3本の橋がかかっている。3本目、一番東の橋を渡った。
だんだん雨が強くなってきた。
「次はどこに行くの?」仕方ないから傘を買うかと思って聞いた。
「ドンバ市場というところです」、「旧市街の中にある大きな市場です」
「それなら傘はいらんやろう」車から降りて入口まで小走りに歩く。
市場の前にも沢山の露店が店を開いている。小雨もなんのそのだ。
入り口付近の人だかりを遠巻きに覗いていたら、ガイドさんが、
「あれはしじみのフォーを売っているんです」と言った。
「シジミのフォーなんて珍しいね」というと、「フエでは人気ですよ」と言う。
「おいしそう」食べてみたいもんだ。
中はホーチミンのベンタン市場と殆ど変らない雰囲気だ。生野菜から精肉、乾物
お菓子、衣料品、ありとあらゆるものが隣合い、ひしめき合い、肩をくっつ合って
売られている。規模からすると、ベンタン市場より遥かに大きいかも知れない。
ベンタン市場のように日本語で声をかけてくることはないが、手を触れんばかり
の親しみをこめて、みな愛想よく、元気の声をかけてくる。
ガイドさんは何故か、ここでは好い顔だ。知り合いが多いみたい。
次々と親しそうに話をしている。それでも目当ての店があるみたいだ。
そこまで連れて行って、「この店は安いし、信用できる」という。
そうかも知れんけど、胡椒も岩塩もホーチミンで買ったあとだしなあ。
さすが、信仰の街だ。精進料理の専門店が沢山あった。
食べ物ばかり見ていたらよけい腹が減ったなあ。