最近夢中で読んだ本・星野博美

  • 2006年12月5日
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ちょっと分厚い本だったので今週は1冊です。
星野博美 「転がる香港に苔は生えない」

すばらしいドキュメンタリーです。
返還前の香港で一時期を暮らし、香港の魅力にとり憑かれた筆者が、なんとしても返還の日々を香港で身を持って体験したいという思いで香港に滞在し、喜び、悲しみ、興奮し、打ちひしがれした日々を熱く語った本です。
本当に熱い本です。
返還前の香港は熱気に満ちています。
返還バブルが始まり、先々の不安と今の混乱の中で、人々は、必死にあがいています。特に、香港は土地が狭く住宅事情が悪い為、狭いところにひしめき合って暮らしています。又、よりよい暮らしを求めて、大陸からどんどん人が流れてきます。それは、陸続きで列車で約1時間、海からでも目と鼻の先という距離の中で、合法非合法に関わらず、人に熱い期待を持たせてしまう距離だということです。
そういう人たちが、入り混じって、生きる為に、少しでもより良い暮らしを勝ち取るために必死で、何かを選択し、生き様を作り出していく逞しい、本当についていけないほど、逞しい、彼らの姿が生き生きと描かれています。
部屋を見つける場面がいいですね。
色々、貸し部屋を探してめぐっているうちに、毎日ゴミ市がたつような、ハーレムのような一角のボロマンションの一部屋にめぐり合った、その時に、外から、がんがんと「ホテルカリフォルニア」の歌が繰り返し繰り返し、聞こえていた。その瞬間、ここに決めてしまったという文があります。
いいですね。本当によくわかります。
好い選択です。
私は、作者ほど、香港に滞在していないので、多くを語る資格はないのですが、返還前に行った時と今とは、人の熱さが少し違うなと感じます。
あのころは、本当に沸き立つような人の熱さを感じました。
そして、そんな香港に魅せられて、とうとう住み着く為に来てしまった人も知っています。
確かにそういう魅力があったと思います。
今は、どうでしょう。
最近何度か通り過ぎたくらいの経験では、かなり、「普通になったな」、「おもろなくなったかな」といった感じがしないでもありません。
何がいいのかはわかりませんが、あの痺れるような人の熱さに触れて、元気を貰いたいものです。

**これからは毎週火曜にはできるだけ本の話をしたいと思います。

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