中沢 新一 「森のバロック」
我が郷土、和歌山の天才「南方熊楠」の話です。
奇人とも言えるでしょう。学校を否定した学者。学問が好きで好きでしょうがなかったのに、学校に行くのが大嫌いだった人。熊野の山奥を徘徊し、森の奥でひたすら思索にふけった人。
アメリカに行き、イギリスに行き、天才的な語学力でその地の学問や知識を身につけ、専門家達の対等に渡り合った人。
粘菌の生態の不思議にとらわれ、形なきものが形を産み態を変え、形あるときには生ではないかのような、植物ともいえず、動物ともいえない不定形の不思議を思惟するうちに、密教の思想と深く交錯し、南方曼荼羅の哲学に行き当たる。これが、作者によれば、現在の構造主義の論理を先取りした、するどく深いものだという話です。
そして、結局は、彼の民俗学のもととなる田舎の市井に住んで、その真っ只中に身をおくことで、その不思議を思索していたのだと思います。
宇宙を飛躍した精神の旅人ですね。すごい人です。
中島誠之助 「骨董屋からくさ主人」
陶磁器が好きで、骨董も好きです。でも中々骨董品を買う気にはなれません。中国旅行などをしていると偽者はあたりまえという世界ですから、どうしても騙される怖さというのが先にたちます。
この本を読んでいても、ある骨董品を考える時には、その物の芸術的な見た目だけでなく、その時代や文化、歴史、地理、作者いろんな要素についての幅広い知識があって、それが、そのものをどう納得させるかとう事で評価をするのかなって思いました。軽妙な語りは楽しいですが、実際は、奥が深くて難しそうです。
良いものを沢山見て勉強しなくては。
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