樋口一葉に「一三夜」という物語りがある。
貧しい家の娘が望まれて、金持ちの家に嫁いでいったが、突然帰ってくる。
突然の帰宅に母親がちょうどよかった団子を造ったばかりだと喜んで言う
・・・今宵は旧暦の一三夜、旧弊なれどお月見の真似事に団子をこしらへて
お月様にお備へ申せし、これはお前も好物なれば少々なりとも亥之助に持た
せて上やうと思ふたれど、亥之助も何か極りを悪るがって其様な物はお止し
なされと言ふし、一五夜にあげなんだから片月見になっても悪るし、喰べさ
せたいと思ひながら思ふばかりで上る事が出来なんだに、今夜来て呉れると
は夢の様な、ほんに心が届いたのであらう・・・
しかし、余りにも無体な嫁ぎ先の仕打ちにとうとう辛抱たまらず帰ってきた
娘だったのだ。
美しい文章だが哀しい物語りだ。
先日の中秋節の夜、散歩をしていたら美しい月がでていた。
あまり綺麗なので立ち止まって見ていたら、丁度若者が通りかかった。
彼もしばらく月を見いるなと思ったら、携帯電話をとりだして
写しはじめた。折角の名月を恋人に送るのだろう。
一五夜の後は一三夜、今年は10月30日だ。
彼らも片月見ではなくて、両方の月見をして幸せになってもらいたいものだ。
一五夜は芋名月。一三夜は栗名月というらしい。
私は芋は食べたから、次は栗を食べて祝うとしよう。
何を?
長寿かな?
10月30日も晴れて好い月が見れますように。