水墨画を画くのに中国のいわゆる端渓硯を使っているが、どうも使い勝手がよくない。
使い方が下手なせいもあるのだろうが、丘といわれる墨を磨る部分の形と、
磨った墨液を貯める池の部分の形のバランスや好みがあるのだろう。
今は筆でも墨でも、日本の方が良い物が多い。もしかしたら、硯にも日本でに
良いのがあるのではないかと考えた。
それで調べると、宮城県の雄勝というところに良い石がとれて良い硯があるというのが
分かった。しかし、わざわざ買いに行くのは面倒だ。
ネットの通販とかはちょっと気が進まないし、大阪や京都で専門店に行ってもよくわからない。
それで、思い切って直接電話してみた。
快く応対してくれる。すぐに送ってくれるそうだ。
「使って、気に入らなかったら取り換えるから」と実に良心的だ。
「蓋は要りますか?」と聞くので、蓋は飾りだと思い、「実用本位だから必要ない」
というと、「ちょっと席を外す時、墨が乾かなくて便利ですよ」と言う。
「なるほどそれは気がつかなかった。それはええ考えやね。蓋つきで下さい」
楽しみに待っていると、
二日後にもう届いた。
なかなかかっこ好い。原材の雄勝石で造った文鎮などもつけてくれている。
硯の良し悪しは私には難しい。
指で撫でて表面の滑らかさを見なさい。
とか、水を吸わないほど良いんだよとか教えられた程度だ。
この硯、色も姿も良い。存在感がある。
縁の自然な欠けが味になっている。そして、その欠けにもぴったり合うように
蓋が造られている。
伝統工芸士の技なのだ。
水墨画なので、あまり一度に沢山墨を使わないから、これくらいの小型のものが
使い勝手が良さそうだ。それに、丘や池の具合が使い易すそうだ。
さっそく墨を磨って見た。
なかなか感じが良い。
文房四宝といっても、今や日本でも優れたものがあるのだ。
大事に使っていこう。
店名 開和堂硯舗
住所 宮城県石巻市雄勝町字伊勢畑1-6
電話 0225-57-2327
伝統工芸士 山崎 勝
毎週月曜はこだわりのモノの話です。