メコン河即流に入る
日帰りツアーの中味は盛り沢山だ。
「手漕ぎボートで、ココナツキャンディー工場とハチミツ農園の観光
ハチミツ農園ではハニーティーのサービス、そのほか、フルーツの試食や
メコンデルタの伝統音楽の鑑賞」といった具合に書いてある。
といっても良く見れば簡単に済みそうなものばかり、ツアーの内容をつけるため
にとってつけたようなものだが、お土産屋にばかり行って、欲しくも無いものを
売りつけられるよりははるかに良い。だからなくてもいいが、あっても問題ない。
木陰の庭園で休んでいると茶が出た。これがハニーティーというやつだろう。
「これってお金いるの?」
「こんなの唯と違うの?」
聞いて見ても笑って首をふるだけだ。言葉が通じないから仕方がない。
「まあええか」と飲んでみたら、蜂蜜の上品な甘さの下は、ベトナムのロータス
ティだった。
周りはむせるような濃い緑で、鶏が遊んで、犬が寝ころんでいる。
長閑な南方の昼下がりだ。こういうツアーはなかなかいいものだ。
そろそろ手漕ぎボートに乗り換える。
南米人らしい陽気な家族が先に乗り込んでいく。どこにいても元気一杯、明るさ
満タンの人達だ。
「気をつけてね。小さいボートの乗り降りはあぶないですよ」
側流に入っていくと静寂があった。
あのダイナミックな大河から一転して、ひっそりとした流れになる。
しかし、静かだが濃厚だ。鬱蒼とした緑の中に、花があり。
実がなっている。
河の色も濃く濁っている。
これで10ドルというのは実に安いツアーだ。
十分楽しませてもらった。