「これから「正義」話をしよう いまを生き延びるための哲学」、マイケル・J・サンデル
「今一番話題の・・」とか「超人気の誰誰が書いた・・」とか「空前のベストセラー・・」とか
そういう具合に人気の本を尻馬に乗って読むのはあまり好きではない。しかしまあ、借りてしまって
いやなら読まなければいいのが図書館のいい所だ。それでチェックしたら順番がくるまでえらい時間が
かかってしまった。それでも人気は衰えていないから本物なんだろう。
正直言ってこの本を読んでよかったと思う。
いろんな事をきちんと考えることに時間と体力を費やしていない。
意にそわない方向に行きそうな議論を避ける傾向にある。
こういうおのれが良く見えてきた。
・一人を殺せば多くの人が助かると分かっている時、その殺人は正義なのか・・・
・金持ちに高い税金をかけて社会に還元することは正義なのか・・・
・災害の困窮に乗じて利益を得るのは不当なのか・・・
・前の世代がおかした過ちに次の世代が責任を負わないといけないのか・・・
わざと極論を言って揺さぶるやり方はすきではないが、良く考えると、良く考えないといけないこと
ばかりなのだ。
震災泥棒がいるという。「許しがたい行為だ」というが、その犯人も被災者で、「事情を考えたら一概に
責められへんわなあ」という場合もあるという話を聞いた。
「最大多数の幸福を生みだす」、「選択の自由を尊重する」
それはそのとおりだが、その現実を考えて考え尽くすのは非常に難しい。
しかし、「美徳を涵養する社会」であって、「共通善について議論する社会」であってほしい。
「公正な社会を達成するためには善良な生活の意味を我々が共に考え、避けられない不一致を受け入れ
られる公共の文化をつくりださなくてはいけない」
こんな事を考え議論する場が出来ることが大事な事なのだ。
「美徳を涵養する社会」、心に響く言葉だ。
それで、愚かな私はどうやって行動しよう。
いろんな事を考えさせてくれる本であった。
「秘密」、P・D・ジェイムズ
P・D・ジェイムズを読むのは久しぶりだ。昔はエラリー・クイーンなどと共に本格推理小説として
良く読んでいた。がころっと忘れてしまっていた。
最近ケーブルテレビでミステリーチャンネルなるものがあって、推理小説好きの私は良く見ている。
そこではアガサ・クリスティの特集が延々とあって、名探偵ポアロものなんかは大好きからずっと見ていた
が同じものが延々と繰り返されるようになっていい加減あきてきていた。
(今はなくなったので逆に又寂しくなって見たいなあと思っているが)
そんな時に、P・D・ジェイムズのダルグリッシュ警視シリーズを4作ほどやったが面白かったのだ。
「秘密」はこのシリーズの終わりの方の部類になるだろう。警視は引退なのか転向なのかチームを解散を
考え始めた頃だ。
クリスティのように英国の田園風景が舞台だ。
時代は殆ど現代、新たな英国の風景が描かれている。クリスティは田舎の領主や貴族や金持ちが主体の
世界を描いていたが、P・D・ジェイムズはそれに代わる現代のエリート達が登場人物像になっている。
人の「秘密」をあばいて暮らす、ジャーナリストのローダにも秘密がある。
ローダが新たに嗅ぎつけた秘密を公にされては困る人達がいる。
田舎の特別な荘園で特別な美容整形手術を受けた後、ローダは・・・・・
P・D・ジェイムズは90歳を越えたそうだ。
衰えを知らない筆さばきだ。
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