最近夢中で読んだ本の話、ジョン・アーヴィング、佐江衆一

  • 2010年1月5日
  • 2人
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ジョン・アーヴィング、「第四の手」
アメリカのテレビのニュースキャスターがインドでサーカスを取材していた。
と始まると、「サーカスの息子たち」を思い出すが、この本はそれ以上に面白いかも知れない。
すごい語り手だ。
その取材中にライオンに左手を食いちぎられたのだ。
それが一部始終報道された。
それでかれは禍に出くわす代名詞になってしまった。
最初2本の手があった。そして1本なくなった。
移植の提供を申し出る人がいた。
移植の名人がいた。それで3本目の手ができた。
死んで提供した手の持ち主を愛してやまない妻がいた。
手もまた彼女を覚えていて愛するかのようだ。しかし移植はうまくいなかい。
手を切り離そう。
しかし手の思い出だけが残った。その見えない手があるかぎり、その女を愛せると思った。
それが4本目の手だ。
よくもまあ、こんなお話が考えられるものだ。

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佐江衆一、「自鳴琴からくり人形」
かなり前にこのブログでも紹介した、スティーヴン・ミルハウザーと言う人の、
「ナイフ投げ師」という本がある。「語りの凄み、ここに極まる」と本の帯にも書かれている。
とてもシュールな作品だ。
その中に、「新自動人形劇場」というのがある。
自動人形作りの名人がいて、あまりにも見事に美しく生々しく作るものだから、その人形に
本気で恋をしてしまう人がでてくるという話だ。
この本のからくり人形は、茶くみ人形だ。ある名人が殿様にその茶くみ人形を献上したところ
あまりにも見事にできたので、殿様が感心して、「でかした」と人形の頭をぽかりとやったら
人形は怒って、殿様を睨みつけ、腰にさした刀を抜きそうになったので、驚いた殿様から
その人形師は手鎖の刑にされてしまったそうだ。
そういう名人奇人の話が楽しい。
包丁人、団扇師、急須の飾り師、花火師、鼈甲師、根付け師、江戸の粋とセンスと超絶技巧が
匂いたっている。

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毎週火曜は最近夢中で読んだ本の話です。