最近読んだ本、「鯖」、「元年春之祭」

  • 2018年12月18日

赤松利市、「鯖」

日本海の孤島で漁師たちがすさんだ暮らしをしていた。元はといえば紀州雑賀崎の
一本釣り漁師団、海の雑賀衆と言われた漁師たちの成れの果てだ。かっての栄光は
もはやない。それでも、残り1艘の船で大鋸権座船頭の指揮の下、加羅門寅吉、
烏森留造、狗巻南風次達、海千山千のしかし、腕は確かな超ベテランの漁師たち
に加えて見習いの水軒(みずのき)新一で日々海に出てその日暮らしの糧を求めて
漁を行ってる。しかも釣れた魚はとても良いものだ。しかし、その価値通りに
売り捌くすべがない。船頭の知り合いの割烹恵の女将、恵子がまとめて買ってくれる
のがたよりだ。その日暮らしで飲んだくれるしかない彼らの暮らしであるが
少しずつ運が向いてきたのではないやろか?
彼らの釣る鯖が注目され始めたらしい? ヘシコにしたら大きなビジネスに?
IT企業がからんで中国で大々的に売り捌く?
どんどん話が大きくなる。
新一が新しい頭でいいのか?
大きくなる話に見合った水揚げができない? 新しい船? 新しい人材?
加工する人手? 投資も膨らむ? しかし巨大なマネーが動き出したのか?
その裏にややこしい話がありそうだ?
何もかも順調に行きそうだったある日、事件は起きた。そこからさきは何がどうなる。
誰が信じられる? 本当の悪人は誰だ? とうとうしてはならないことに手を・・
前半はとても面白いけど後半は不快なとこが多い。
確かに斬新なアイデアと格好いいキャラクターたち、筋運びもリズミカルでダイナミック、
ハラハラドキドキの展開が素晴らしいけど、根底にある暴力礼賛のような
そんな世界で何が悪いというようなそんな気分で受け止めてしまうような
表現がわしには不快になる。ある意味面白いだけに複雑だ。

陸秋槎、「元年春之祭」

中国の歴史は奥深い。この本の舞台は遥か2000年以上前、前漢時代の頃の話らしい。
そんな時代って日本で言えば、弥生時代のあたりの話? 日本書紀や古事記が語る古代の
頃の話? そんな時代にミステリーにできる暮らしや文化があったなんてそれだけでも
すごい。
その時代のある地方に代々祭祀を司る家、観家があった。おりしも春の祭儀の準備の
最中に当主の妹が死んだ。殺されたの事故なのか? 自殺なのか?
たまたまそこに滞在していた於陵葵はその学識と聡明さで知られていたため、この
事件の解明を委ねられる。
調べるにつれて様々なことが明らかになる一方、次々に不思議な事件が起こっている。
事件は詩経に謳われたことと関係があるのか?
事件は屈原の楚辞の中、離騒や九歌などの内容と関わるのか?
あるいは古代に祝詞のようなものに謳われた世界を再現したものなのか?
於陵葵はこの難解なからくりを解きほぐすことができるのか?
自らに災は及ばないのか?
一族が抱える闇とは何なのか?
巫女であるがゆえに閉ざされた人生をおくらねばならない恨みつらみはどうなるのか?
とても面白い。
中国の古典中の古典である、「詩経」や「楚辞」ってその文章に触れたり、解説を
読んだりした事くらいはあるけど、その背景にある文化や歴史との関係はさっぱり
わからんから行間を読むことなんかとてもできへんし、文章自体もとても難解だ。
それとその当時の祭祀との関係なんてもっとわけわからへん。
そういう世界が、こういう推理小説の形で、殺人事件の謎を解きほぐしつつ、
「詩経」や「楚辞」の内容が解説されていくと、そちらのほうがとても興味深くて
面白い。それだけで夢中になってしまう。
そういう本だ。
とても奥が深い。そして面白い。

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ありがとうございました。