映画、「牛の鈴音」

今年は春に雲南に行った。田植えの頃の棚田を見に行ったのだ。
見渡す限りの山々に山肌一面に田を切っている。
何千何万もの棚田がある時は雲海の下に、ある時は雲海の上に見えている。
壮観であり、荘厳でもあった。
日の出の棚田は息を飲む程美しかった。
瞬間、真っ赤に染まった雲が棚田の水面に照り映え、その上を雲が流れて行くのだ。
田植えは水牛だ。
機械などは使っていない。
田には鴨が放されている。
鴨が害虫を食うのだろう。
自然の営みが美しかった。
この映画は、韓国の山村が舞台だ。
牛と共に田畑を耕して一生を暮らす老夫婦を追いかけたドキュメンタリーだ。
物言わぬ牛と寡黙な老人の傍らで、愚痴を言っているかのように、悪態を
ついているかのように、老婦が喋りつづけている。
このおばちゃんええなあ。こんな感じ大好きやなあ。
まるで彼らの人生を解説してるみたいや。
ここの自然も美しい。心に留めておきたい風景だ。
水墨落書き帖にちょっとだけ画いてみた。
詩は陶淵明。
夏日長抱飢 寒夜無被眠 飢えた夏の日は長いし 寒い夜に布団もない
造夕思鶏鳴 及晨願烏遷 夜は早く朝が来てほしいし、朝になったら日が暮れるのを願う
在己何怨天       己のせいだ。天を恨んでもしょうがない。
どうにもならない貧しい暮らしを謳っている。
しかし、この映画の老夫婦と一匹の牛は実に心豊かな生活だと思う。

usi091231

毎週木曜は映画、音楽、書画に関する話です。