浅田次郎、「マンチュリアン・リポート」
いやあこの本、実にがっかりした。多分、「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」、「中原の虹」と続いた
清朝の崩壊期を描く大スペクタクルの延長線状にある物語りだろうと思っていた。
だから、同じ様に、血湧き肉踊るわくわくどきどきの物語りだと期待していた。
確かに、延長線上にある。
清朝最後の独裁者、西太后が使うために、特別誂えの列車が英国から輸入されたのだ。
この列車が主人公だ。
それで、今迄の物語りを彩ってきた梟雄、張作霖が爆殺されるまでの、歴史の暗闇をえぐって
みようという話なのだ。
しかし、あんまりおもしろくない。リズムにのらない。わくわくしない。
ずっと前に読んだ、西太后の姪?の徳齢という人が書いた、「西太后汽車に乗る」という本の
方がはるかに面白かった。
西太后とこの列車との関係が実によくわかる。
西太后が起きている間はだれも横になれない。
竈を50台ずつ積んだ車両が2台、衣服、宝石は数知れず。
帝王の列車っておもしろい。
宮城谷昌光、「楚漢名臣列伝」
夏目漱石に「虞美人草」という小説がある。「虞美人」という言葉のイメージを切り取って
見事な一巻の小説に仕立て上げたのだ。さすが名人だ。
その虞美人というのは、実は「項羽と劉邦」という二人の英雄の戦いの時代、つまり楚と漢の
国の争いの時代の話なのだ。
「楚漢名臣列伝」というのは、虞美人とは全く関係なくて、この「項羽と劉邦」の戦いの時代、
まだ、春秋戦国の時代が終わってもまだ国に形が定かでなかったじだいに活躍した名臣、名将
達の話を描いているのだ。
張良、范増、陳余、章邯、蕭何、田横、夏侯嬰、曹参、陳平、周勃。
あまりなじみのない人が多いが、知っている人もいる。
権謀術策も今となっては素朴に思えたりして結構楽しめる。
こういう知識を仕入れておくと、中国映画を見たり、中国でテレビドラマを見たりするときに
楽しいのだ。
多分、舞台は湖南省や江蘇省、浙江省あたりだと思う。行ったことがあるところばかりなので
その地を想像しながら読むのも楽しいものだ。
毎週火曜は最近読んだ本の話です。
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