ある社員食堂。
鉄道会社のやつだ。
乗り降りのついでに入れる。とても便利。
とても安い。とても美味しい。
駅に入ったら直ぐに電車に乗らんと落ち着かへん。
現役時代は毎日、片道１時間以上、電車3本乗り継いでの通勤やった。朝早くて、夜遅い。のんびり乗り換え時間を楽しむ余裕なんかあらへん。
あくせく、せかせかと通路、階段を小走りに・・・
こういうのが身についてしまうと駅中はコーヒー飲んだり、飯食ったり、ゆっくりする気分になれんのだ。
それでも、こういう安くて美味い食堂があると、つい心が騒ぐ。
たまには行ってみる。
ここは、基本社員食堂やから社員さんがメインのお客さん。わしら部外者は入れるけど、遠慮がちに、迷路のような入り口を探して中に入る。
いきなり、食券券売機に並ぶ。緊張してる。
メニューは？ 壁に？ 見本もある？
ちょい焦りつつお金を入れる、小銭がない、千円札。
券をとって、トレイを持って、茶碗にお茶入れて、調理場カウンターへ。
ごはん少なめでおねがい。
慣れへんとギクシャク。頭の隅でなんか違和感？ 何かわからん。
席はまあまあ混んでる。社員さんも一般さんも混在。端っこへそっと。
とても美味しい。これでこの値段。ええなあ。得したなあ。
大満足で、電車に乗る。ちゃっちゃとすんでよかった。
電車が動きだして、はっと気がついた。お釣りを忘れた。
というか、返却ボタンを押すのを忘れてた。
いろいろ緊張してて、食券を手にしたとたんにお釣りが頭から飛んだ。
でも、心のどこかにひっかかりがあって、それをやっと思い出したのだ。
アホやね。
勿体無い。
損したというより、せっかく安くて美味いモンを提供してくれてる仕組みを無碍にしたという残念さ。
こんどから気をつけよう。
それ以来、ジュースやコーヒーの自販機で返却ボタン押しまくってる。
コンビニのコピー機でも。
たまに10円くらい出てくることがあるんで面白い。
ドジはわしだけではない。
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