奇妙な2人のおっさん。
先日、ある有名なホテルのロビーやらを移動してたら、壁に飾ってある絵が目についた。小振りの水墨画だ。
しかも、なんだか気持ち悪いおっさん2人の顔がアップで描いてある。
これがまた、結構ええ味出しているのだ。
ええなあ、こんなん描きたいなあって思った。
寒山拾得図だ。多分。
山中の寺にすむ奇人で、禅画的な絵によく登場する。
一人は箒をもってる。一人はお経を持ってる。2人とも奇妙な笑顔を浮かべてるというのがスタイルなのだそうだ。
なるほどヘンテコだ。
寒山拾得についてもうちょっと調べてみる。
読んだことあるかどうかもう忘れたけど、森鴎外の小説に「寒山拾得」というのがあるらしい。
ある日、杭州のある地方のえらいさんのとこへ坊さんがやってきた。何の用かと聞いたら、お前の頭痛を治してやるという。
ええ薬があるのかというと水で良いという。水を口に含んでぶっと顔に吹きかけられた。
とたんに頭痛が消えた。
なんとありがたい。
その僧は杭州の南の方にある天台山、国清寺の豊干だという。
そこには拾得という坊さんがいて、実は普賢菩薩。
西の石窟には寒山という坊さんがいて、実は文殊菩薩だという。
その後、訪ねてみた。
豊干というのは修行僧たちの食べる米を挽いていた人。
拾得は豊干が松林で拾ってきた捨て子。
寒山は拾得から残り物の飯をもらってくらしている。
じっさいにけったいな男たちが自由自在な暮らしをしていた。
いかにもな禅語的な世界の話である。
どうも実在した人物たちらしい。
知らんけど。
寒山のこんな詩も残っているらしい。
我れ今一襦(いちじゅ)有り
羅(ら)に非(あら)ず復(ま)た綺(き)に非ず
借問す何の色をか作(な)すと
紅(くれない)に不(あら)ず亦た紫に不ず
夏天には将(も)って衫(さん)と作(な)し
冬天には将って被(ひ)と作す
冬夏 逓互(たがい)に用い
長年 只だ 者(こ)れ是(こ)れのみ
絵を描いてみた。
てなことでわしも絵を描いてみた。
「Kuanzan Jittoku」
紙本、F10号 45.5x53cm
さて、どんな悟りが開けるやら。
それにしても、天台山って、昔から日本の修行僧の憧れの地。
だったらしい。
それが、杭州にあったとは知らんかった。
せっかくこの地に滞在してたことがあったのに、行っておけばよかった。
天目山やったら行ったけど。
ここも仏教の修行の寺やった。
中国にもまだ仏教の聖地が残ってる。
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