「しろがねの葉」。
千早茜 著。
常闇に居る。
秀吉の唐入り戦の頃の話。ウメは子どもながら夜目が効く。
やがてある日、とうとう食うに困った一家は夜逃げを企てる。村の米を盗んで山を越す。無事に逃げられるはずがない。それでもウメだけは。
山師、喜兵衛に拾われたウメは、銀堀たちのあいだで育っていく。
「ここは、山に幾百と穿たれた間歩の中なのか、生まれ落ちる前の胎内なのか。それとも、この身に空いた穴を覗き込んでいるのか。あじまりも終わりもない闇。闇の中では、今も昔もすべてが混ざり合ってしまう。未来永劫、繰り返される因果に呑まれたように。・・・・・・」本文より。
男たちは、命を削って働いて、やがて逃れられない病に倒れて、死んでいく。
不条理の闇に中に。
女たちは、子を産んで育てて、間歩の中に送り出す。夫がいなくなれば、次の男と・・・そして暗闇の中に送り出す日々。
ウメは男と一緒に穴に入る。ウメは鬼娘、闇夜が見える。
しかし、女になったらもう許されない?
そして、隼人と結ばれる日が来るのか?
喜兵衛は稀代の山師。仙の山の小屋に何があるのか? 岩爺の秘密とは?
おとよの運命は?
女たちの運命は?
青い瞳の龍とは? どこからきてどこへいく?
とても面白い。
石見銀山の話。
暗闇に蠢く人々の話。
わしの勝手なおすすめ度。
星三つ半。
「七月七日」。
ケン・リュウ 藤井太洋 ほか著
七夕の夜、ユアンは留学で中国を離れる。
ケン・リュウの「紙の動物園」は素晴らしかった。「もののあはれ」もとても良い。
わしの大好きな作家だ。 中国の漢詩や古典、民話などにとても造詣が深い。日本の「もののあはれ」や「侘び寂び」などもわかってくれている。
わしにとっては波長がとても合わせやすい感性の作品が多いのだ。
とても期待して読み始めたけど、ケン・リュウだけの作品ではなくて、中国、韓国、日本の作家達との合作短編集だった。
・七月七日 ケン・リュウ
蘇東坡の中秋の名月を謳った詩がでてくる。
蘇東坡 「水調歌頭」
明月幾時有 明月幾時よりか有る
把酒問青天 酒を把って青天に問ふ
不知天上宮闕 知らず天上の宮闕
今夕是何年 今夕は是何れの年ぞ
我欲乘風歸去 我風に乘って歸り去らんと欲す
又恐瓊樓玉宇 又恐る瓊樓の玉宇
高處不勝寒 高き處寒さに勝へざらんことを
起舞弄清影 起舞して清影を弄ぶ
何似在人間 何ぞ似たる人間に在るに
年に一度だけ会える恋人達。美しい永遠の恋。
果たして?
その一日を待つ為だけの人生って?
永遠の囚われ人?
・年の物語 レジーナ・カンユー・ワン
新年の怪物の話。正月に現れるという人喰いの怪物? 未来の世界では?
・九十九の野獣が死んだら ホン・ジウン
韓国、済州島に伝わる説話より。九十九の谷に住む野獣たちは退治されるのか?
はたして?
・巨人少女 ナム・ユハ
突然、巨人になってしまった少女。異端者は殺されてしまうのか? 母は? 故郷の済州の小さな島に帰ろう。そして?
・徐福が去った宇宙で ナム・セオ
徐福の旅は子どもと技術者を連れての旅だった。それはなぜ? 実は何を求めて?
未来の徐福は宇宙船に何を? 宇宙の火山のエネルギーの真っ只中で海人は何を求めて?
・海を流れる川の先 藤井太洋
海の中を流れる川があるのか? 奄美に伝わる謎の話?
・・・やっちまった! クァク・ジェシク
済州島の神話の物語。
不毛の故郷 イ・ヨンイン
ソーシャル巫堂指数 ユン・ヨギャン
紅真国大別相伝 イ・ギョンヒ
いろいろと楽しい。
なんだか済州島の民話ばっかりのような気もするけど。
わしの勝手なおすすめ度。
星三つ半。
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