またまた四文字熟語で遊んでみた。
「酔歩蹣跚(まんさん)」。
山頭火に「酔うてこほろぎと寝ていたよ」って句がある。
酒好きが、飲んで酔っぱらって、ええ気分で寝てしまった。しかも、野っ原で。という風景が目に浮かぶ。
ええ酒ですなあ。
はるかな昔、若い頃、しこたま飲んで目が回って、いつの間にかバス停前の地べたに寝ていた。
らしい。
気がついたら、周りに人がざわついてて、パトカーの回転灯も見えたような? 慌てて起き上がって、何事もなかったように誤魔化しつつ去っていった。そんな記憶が朧げにある。
若気のいたりか? 最低やね。
酒で身を持ち崩した、えらいことになった友人も多い。飲んで暴れて人間関係を棒に振ったり、車に乗って事故を起こしたり。大怪我をしたり。
わしは、胃の手術を受けてからめっきり酒が弱くなった。沢山飲んだらしんどくなる。
ならばやめてしまえばええのにそうはいかない。
やっぱり酒は美味い。酔うたら気分が良い。
老衰爺さんも元気が出る。
「一竿風月」。
枕草子にこんな文章がある。
「虫は すずむし。ひぐらし。てふ。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひをむし。螢。
みのむし、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらんとて、親のあやしききぬひき着せて、「いま秋風吹かむをりぞ来んとする。まてよ」といひおきて、にげていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。・・・」
(鈴虫は松虫 キリギリスはコオロギ はたおりはキリギリス ひをむし かげろう?
らしい。知らんけど)
虫の声に興趣を感じるような雅な境地にいつになったらなれるのやら。温暖化のせいか年々厳しくなる暑さに老残の身は息も絶え絶え、ようやく過ぎて虫の声が聞こえるとほっとする。
それにしても、みのむしが鳴くとは知らんかった。鬼の子か?
あわれなり。
「一触即発」。
巷によく噂に上る人気の酒場があったりする。あるいは知る人ぞ知る個性的な居酒屋さんがあったりする。個性的な店主がいて、よくもわるくも話題になって、それが気になって人があつまる飲み屋さんもある。
昔は、なんだかんだとそんなとこを求めて飲み歩いたときもあった。
そんな中でも頭抜けて個性的な店が忘れられない。都会の裏通り、ちょい奥の寂しいあたり、昭和の香りが濃厚なおでんやさんみたいな。肴の数は多くはない。けど美味しい。あいそもくそもなく淡々と接客してはる。盛り上がりもまったくない。その距離感がとてもいい。お客さんが入ってくると、「予約で一杯です」なんんていきなり断わられる人もいてる。わしらがなんでセーフなんかわからへんけど一安心する。若いカップルがやってきて、入るなり、「トイレ貸して?」って言ったら、うちはそんなんしてへんから、帰ってくれと言う。客がトイレはいいからって座ろうとしても、帰ってくれって追い返してしまった。見てるだけで緊張する。わしらはなんでセーフなんやろ。気に入られてるわけでもない。それでも飲んでて、気分がよくなって、もっと飲みたくなってお代わりをたのんだら、もうだめっ、帰って下さいって、ビシっと言われた。何杯飲ませるか決まってるみたい。
とてもええお店やったけど緊張しましたなあ。
「諸行無常」。
天才は変わってる。傑物は変人だ。
よく言われる。
昔、わしが現役時代、天才かどうかはわからんけど、たしかに傑物とは言える、しかも十二分に変人と言っていい、上司がいた。
もう40年ほど前に、今のネット社会を完璧に予言してはった。
まだインターネットと言う言葉さえ世の中にはっきりとは出て来てない時代だ。手書きで図面を書いてた時代だ。そんな時、これからは通信の時代だ。ネットワークの時代だ。だれもがメールやネットワークで仕事をするようになる。世界中を結んでオンラインで設計をするようになる。コンピュータで設計するようになる。しかも3次元だ。
すごい人だった。若手のバリバリではない。当時でかなりの爺さんだった。たいしたもんだ。予測するだけではない。それをすぐにやれ、お前たちがやれと言う。
すばらしい未来。やるのは楽しくてワクワクする。しかし、やれと言われると具体的には無理難題ばっかりが目の前に。
爺さんは挫けない。大したもんだ。必死でついていっても雲の上だ。
そしてどうなった。
ついていけない人たちが結束して、結局は追い出してしまった。
そしてどうなった。
しばらくして、定年退職しはって、すぐに亡くなった。
そしてどうなった。
世の中はその人の言うように、まったくそのように進んでいった。
インターネットがなくてはならない時代。メール、Web、3次元CAD、コラボ設計、3Dプリンター、何でも予測してはった。
思い出話は限りなくある。
諸行無常なり。
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