最近読んだ本、「夕霧花園」、「マレーシアスケッチ」。

  • 2023年8月2日
  • 13人

「夕霧花園」。

タン・トゥアンエン著。

あじあん

かって雲海に浮かぶ山に日本の天皇の庭師だった男が住んでいた。

前に、マレーシアのペナン島、ジョージタウンなどに旅をしたことがある。その時はクアラルンプールから列車に乗ってイポーまで行き、あとはバスの旅であった。帰りは全部バス。

列車の時は気がつかなかったけど、バスに乗ってた時、イポーを過ぎてしばらくしたら、遠くに山岳地帯が見える山の中を走っていた。疲れてボーっとしながら窓外を見ていたら、不思議な風景を見た。

ここは南国、緑滴る楽園、見渡す限り椰子の木やら、バナナの木やらと思い込んでたら、豈図らんや。

日が暮れて、山の端に夕霧が立っている。霞んだ山里に小さな村がある。田園の暮らしがある。

霧が全てに霞をかけて、とても幽玄な風景を作っている。

まるで、水墨画の世界ではないか。

じきに通りすぎてしまったけど、しばらくは夢の中のようであった。こんなとこがこの国にあるんやねと、

とても不思議だった。

ここをまた見にくる機会があったらええなあ、いやまた是非きたいなあって思った。

この本を読み始めて、もしやと気になって地図をみたら、たぶん、やっぱり、あのあたりやと思う。

なるほどなあって腑に落ちた。

マレーシアが日本の占領下に落ちた時代。

裕福なストレイツ・チャイニーズ系の一族であったユンリンの家族たちは、進駐してきた日本軍に捕らえられた。家族バラバラ、姉妹二人は収容所へ。

姉は無理やり慰安婦に。そして絶望の中、死んでしまった。生き残った妹は逃げることができた。

そして、時が過ぎた。

マレー半島の独立の時代。共産ゲリラとの戦いの時代。

ユンリンは裁判官に。しかし、姉のことが忘れられない。

姉は日本庭園をこよなく愛していた。姉が愛した庭園を思い出のキャメロン高原につくるのだ。

わたしの全てをかけて庭を作る。それには、日本人の庭師、ナカムラ・アリトモの助けが要る。

橘俊綱の作庭記を今のよにに蘇えらせる男?

天皇の庭師だった男?

果たして、その男が協力するのか?

「夕霧花園」は造り始めることができるのか?

アリトモの木版画を訪ねてきたヨシカワ・タツジとは?

彼がかかえるモノは何か?

アリトモは借景の達人? そして彫モノ師?

雲海のなかの「夕霧花園』?

姉がパビリオンオブヘブンであるのか?

かっての恋人、フレデリック・・

マグナスとエミリー。

ストレイツ・チャイニーズ達とかつての支配者、英国人たち。

日本軍がマラヤの占領でやってきた理不尽・・

悲しい歴史が立ち上がる。

風がある。旗がひらめいてる。

動いているのは風か? 旗か?

いや心だよ。

とても面白い。

 

 

なんだか、えらくもったいぶった話でもあるけど、風景がとても良い。

あじあん

わしの勝手なおすすめ度。

星四つ。

「マレー素描集。」

アルフィアン・サアット 著

あじあん

マレーシア暮らしのスケッチ。

上述の「夕霧花園」とこの本、マレーシアつながりで一緒に読み始めたわけではない。たまたま図書館に予約してあったら、偶然同時に来てしまった。

何かの縁だ。

改宗

ふれあわない手

三人姉妹

パヤ・レバー 午前五時

村のラジオ

日没後の礼拝のあと

泊まり

ゲイラン・セライ 午前六時

ハントゥ・テテクのお話

冷ややかな慰め

犠牲

タンピネス 午前七時

わかりやすいのにして

「夕霧花園」とは違って、とても淡白なさらっとしたお話集。

まさに素描集だ。

とても良い。

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日没後の礼拝のあと、ジャおばさんは決まって片手にビニール古路を持って、一階建てアパートの正面の段を降りていった。茶色いゴムサンダルをはいて公園に行く道すがら、ずっと笑顔を浮かべていた。

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それからジャおばさんはビニール袋をほどき。新聞紙を何枚かだして地面に広げるのだった。そして袋から魚を何匹かつまみ出すと、紙の上に広げた。

そして仲間達が来るのを待つ。

しばらくすると灰色のぶち猫が姿を見せた。ためらいがちな様子で、

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多民族な人たち・・

多宗教の人たち・・

満たされた人、満たされない人・・

老いたる人、若い人・・

いろんな素描が流れていく。

とても良い。

 

 

あじあん

わしの勝手なおすすめ度。

星四つ。

あじあん

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