「マーティン・ドレスラーの夢」
スティーヴン・ミルハウザー 著。
「すべてはヴァンダリンホテルからはじまった」
「ナイフ投げ師」を読んだ時からこの作家が大好きになった。
何となくシュールで幻想的、夢中で夢を追う人たちが出てくる、そんな世界のような気がした。
これも、そうかな。
18881年の夏、葉巻商の息子、9歳のマーティン・ドレスラー、毎日、正午にヴァアンダリンホテルに葉巻を届けている。彼は外の仕事に目覚めたか?父はマーティンに葉巻の木を据えることを許してくれた。
その後、ベルボーイの仕事をゲット。
14歳。ハミルトン夫妻。さて、何があったか?
そして、ホテルの早番フロント係に。やりたいことが次々に。
ヘンドリック爺さんが店を閉じたいそうだ。ならば僕がやります。
とうとう支配人秘書に。
チャンスがおとずれた。ビジネスが見えた。
パラダイス・ミュゼが目の前に現れた。チャンスだ。
腹をすかせてない人間を引き寄せるようなランチルームをやろう。夢はとてつもなくふくらむ。
エンジニア長、ウォルター・ダンディが力を貸してくれるはずだ。
メトロポリタン・ランチルーム・アンド・ビリヤードパーラーは1894年10月半ばの土曜日、マーティン22歳の誕生日の1ヶ月半後に開店した。
これは終わりでなく、大いなる始まりだった。
宣伝戦略が功を奏したか、ランチルームは大繁盛。
そろそろ彼も年頃だ。気になるのはホテルの常客、ヴァーノン夫人と二人娘。
金髪のキャロリンと黒髪のエメリンだ。
とても仲良くなった。金髪が気になる。しかし、エメリンはビジネスの相談相手として絶好だ。
さて、どうする?どうなる?
ビジネスの夢は果てしなく広がる。
ランチルームでは飽き足らない。ホテルを経営しよう。
そうなるとただのホテルでは飽き足らない。
特別なアイデアが必要だ。
誰もが夢中で泊りに来たくなるようなところ?
自分の家では経験できないようなところ?
普段できない贅沢を味わえるところ?
ホテルの中に考えられないものがある? それって何?
高級ブティック? 買い物アーケード? デパート? 遊園地? リゾート? 公園?
夢は膨らむばかり。
成功したらお金はいくらでも入ってくる?
アメリカンドリームのニューヨークの街が立ち上がる。
誰もが夢見るニューヨークはこうして出来上がった? アメリカのいい時代?
そして、彼の結婚は? 友情は?
いいことはいつまでも続くのか? 破綻はないのか?
さて、「マーティン・ドレスラーの夢」はどうなるのか?
とても面白い。
とても魅力的だ。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ。
「ある行旅死亡人の物語」
武田惇志 伊藤亜衣 共著。
はじまりはたった数行の死亡記事だった。
はじまりはたった数行の死亡記事だった。天神橋筋商店街の喫茶店でくも膜下出血で亡くなった、身元不明の女、所謂、行旅死亡人。
調べてみたら、尼崎市の住民、所持金がなんと34821350円。しばらく前に報道された西成区の住人が残したお金、20954577円を圧倒的に超えている。
3千万持って、身寄りもなく死んでしまった。
なんだか気になる。そう思ったのは共同通信の記者だった。
記者が本気で調べたらすぐに身元が分かるやろ?
ところがそうはいかん。当然のことながら役所でちゃんと調べてわからんところから出発してる。簡単にはいかんのだ。
それでも、少しずつ調査を広げていく。やっぱり遺留品が頼りだ。
尼崎市の錦江荘に住んでいた。田中千津子。昭和57年賃貸契約書では田中竜次(仮名)の名が。
これは誰だ? 夫か?
住民票は? 職権で削除されてる。
本籍地はわからない。死亡届出せない。年金手帳では昭和20年9月17日生まれ。
労災事故右手指失くしたらしい。病院カルテから広島市出身3人姉妹という情報も。
年金手帳は貰ってない。
一体この人は誰なのだ? この所持金はどうやって手に入れたのだ?
謎は深まるばかり。住民票や年金手帳からはどこにも辿りつけない。
探偵にたのんで探るも進展しない。
遺留品の中に「沖宗」という印鑑が気になる。
なんだかミステリーを読んでるみたい。
犯人探しみたい。
とてもおもしろい。
昔の写真の画像を探るなんて、「OSINT」の活動みたい。
記者たちの執念がとうとう実るのか?
関係者たちの協力も必要だ。
この人の、故郷はわかったのか?
どんな暮らしをしてきたひとなのか?
家族は? 親兄弟は? 学校は? 友達は? 結婚は?
そして金の出どころは?
とても面白い。
さて、どうなったか、本を読んでね。
これは調査報告でもある。これをベースに小説ができたらいいね。
なんだか、ワクワクするような話が生まれそう。
わしの勝手なおすすめ度。
星四つ。
ブログランキングに参加していますよかったらポチンとお願いいたします。