われら闇より天を見る
クリス・ウィタカー著。
ダッチェスの哀しみが心を打つ。
読み終わってから初めてこの本がミステリーであったと気がついた。
謎解きよりももっともっと心惹かれる話がここにあった。
カリフォルニア、カブリロ・ハイウェイ、ケープ・ヘィヴンから先のあの完璧な数キロ、瞬きするたびに絶景が見えるので、国の反対側から人々がやってきては家を買い1年のうち10ヶ月は空き家にしておく。そんな楽園のような場所だ。
母親スターがまた倒れてる。死んではいない。自殺未遂?
途方にくれる娘、ダッチェス。弟のロビンは彼女が面倒を見るしかない?
「私は無法者よ」というのがダッチェスの口癖。
スターは飲んだくれていつも面倒を起こす。
こんどの揉め事の相手は、いつもの不動産屋のダーク? それとも肉屋のミルトン?
車自慢のブランドン?
美人の彼女は皆に狙われてる。しかし、体は売ってない。
ウォーク署長はそれとなく、彼女の家族を見守ってる。なぜ?
ある日、ヴィンセントが30年ぶりに出所してきた。
いったいあの時何があったのか。シシーを殺したのは本当にヴィンセントなのか?
ウォークはヴィンセントの親友だ。あれから30年皆が立ち直れないのか?
ウォークのパーキンソン病はひどくなるばかり。
母が殴られて帰ってきた。またダークか?ダッチェスが切れた。
ダークの店に火をつける。しかしダークではなかった。
誰と誰がどうなってる? 憎しみの連鎖が絡み合ってる?
そして、とうとう悲劇が起こった。
ウォークが巡回中にスターの家がおかしいのに気がついた。中に入るとヴィンセントがいた。
そしてスターが死んでる?
ロビンもいた。そこへダッチェスが帰ってきた。
いったい何が起こったのか?
姉弟はこれからどうなるのか?
モンタナの農場で暮らすスターの父ハルのもとに引き取られる。
これで、田舎でのんびりと安全な暮らしになるのか?
彼らを見捨てていたはずのハルとの暮らしとは?
もしかしてダッチェスは追われてる?
ダッチェスは田舎でも「無法者?」?
私は無法者のダッチェス・デイ・ラドリー。悲しい強がり?
ウォークは真相を追う。本当にヴィンセントなのか?
元恋人、マーサ・メイは弁護士として助けてくれるのか?
真相はとても遠くにありそうだ。
そして又、悲劇が。
ハルが?・・・・
ダッチェスがんばれ! 負けるな!
真犯人は誰なのか? 裁判の行くへどうなる?
ダッチェスはカリフォルニアにたどり着くのか?
ダッチェスに恋した少年は?
ロビンは?
とても面白い、ロードムービーみたい。
でも、やっぱりミステリーだった。
わしの勝手なおすすめ度。
星5つ。
荒地の家族
佐藤厚志著
壊れていく人たち。
剪定、造園、草刈り、庭掃除、なんでもやる一人親方で奮闘の裕治が抱えているものは。
未だに知加子との離婚が受け入れられない?
さらに死んだ妻、晴美の喪失感から抜けられない?
仕事に逃げるだけの日々に救いはあるのか?
あの日、一瞬で全てを奪った大波が、彼の心も打ち砕いてしまった?
何かと助けてくれる父の友人、河原木六郎。
その息子、明夫とも幼馴染のはず?
しかし、なにかが食い違ってしまってる。
彼の心も痛んでしまっているのか?
あの日、一瞬で全てを奪った大波が、別れた妻と子を連れて行ってしまった。
切ない話だ。辛い話。
そんな重荷に向き合えないで、また、新たな重荷を作っていく。
すべては俺のせいだ。
暗い、やるせない話を淡々と綴りながら物語がたちあがっていく。
筆の力はすごいなあ。
でも、難しい。
わしの勝手なおすすめ度。
星3つ半。