「失われた岬」
篠田節子 著
「さとり」とは、「不老不死」とは。
第1章 冬の旅
理想の夫婦、プロの主婦、松浦美都子にとって、栂原清花はそんな女性に見えた。彼女たち夫婦との交流はとても心豊かにしてくれるものだった。それがある日突然途絶えた。
予兆はあった。いつの間にか彼らの生活が変わった。モノがどんどんなくなっていく。金がなくなった?
あまりにも質素な暮らしに? 大事にしてた犬までいなくなった。まさかカルト宗教にはまった?
どうやら北海道にいるらしい。旭川、新子牛田。
アメリカで暮らしていた娘が帰国。一緒に両親を探す手伝いをするために北海道に飛ぶ。
かれらが住んでたという家には辿り着いた。ここから、両親の足跡は途絶えた?
入居者は次々の変わるのだそうだ。
もしかして岬に関係がある?岬には旧陸軍の秘密工場があったという。
もしかして、秘密のカルト集団との連絡装置か?
そして鳩小屋。伝書鳩?
清花と会えた?
一体何が起きている。
第2章 ハイマツの獄
頭骨が削られ眼球がない男、AIが心理療法士として対応、治療を拒絶していた男が突然過去を語り始めた。
若手実業家、岡村陽。大いなる成功者。得られないものはない?
ある時、肇子と出会う。地味ではあるがとても内面の豊かさを感じる佇まい。
惚れられたつもりで惚れてしまった。しかし遅かった。
そして、なぜか肇子が消えた。
長野の廃村? 大麻栽培グループと関係が? 樹木葬の寺の主人とは?
そこからもいなくなって、北海道へ?
男は彼女を追って岬に行く そこで熊に襲われた?
謎が謎を呼ぶ。話はどんどん複雑に。話はどんどん面白くなる。
第3章 不老不死の薬
母からの手紙を携えて、再び愛子が日本に帰ってきた。
何も欲しいものはない。欲望やしがらみから超越したはずの母がなぜ?
たくさんのものを欲しがらなければ人はそれほど老いることもないし病気にもならない?
それは薬のせいなのか? それは薬物依存を治すのか? 癌もなおす? 不老不死の薬なのか?
第4章 ストックホルムで消えた
一ノ瀬和紀、小説家。寛容な「人格者」の書いた小説、まるで児童文学と言われ、日本では不評だが、海外で高い評価を受けつづけ、ついにノーベル賞をもらうことになった。
その授賞式の当日、彼がいなくなった。何故?
担当編集者の相沢が彼を追う。彼も北海道へ? 何故?
相沢が調べる。もしかして薬物に? コカイン?
薬物依存治療がらみなのか? 岬である種の植物栽培が行われてる?
相沢が岬の施設で一ノ瀬に会うことができた。そこにいるのは、永遠に歳をとらない人たち?
第5章 崩壊
第6章 秘密の花園
第7章 キャンプ
第8章 研究所
第9章 破滅
サラームとは? TJとは誰?
アイヌの知恵? いや先住民の?
さとりとは「虚無の病」なのか? 脳の報酬系が機能しないとは?
とても読み応えがある。とても面白い。
ミステリーとは思えないミステリー。
わしの勝手なおすすめ度。
星4つ半。
「グッゲンハイムの謎」
ロビン・スティーヴンス 著
シヴォーン・ダウドの急逝により、元々執筆、出版されるはずだった本を、依頼を受けて、著者が執筆したということらしい。シヴォーン・ダウドの前作、「ロンドン・アイの謎」の続編になっている。内容も雰囲気もうまく踏襲されている。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館で何が起きたか。
テッドとカットの兄弟とママのフェイがニューヨークを訪れた。グロリアおばさんと従兄弟のサリムに会いにきたのだ。
グロリアおばさんはグッゲンハイム美術館主任学芸員だ。ちょうど良い、メンテナンス工事で休館中の美術館へ休館日特別見学で案内しよう。
フランク・ロイド・ライトが設計したとても特殊化な形の美術館だ。現代美術がよく似合う。
その最中に事件が起こった。
なんだかきな臭い。何かが燃えている? 消防車がくる騒ぎに。そのどさくさに絵が1枚盗まれた。
ワシリー・カンディンスキー「黒い正方形の中に」だ。価値は計り知れない。
早速、警察が捜査を始めた。どうも騒ぎの真っ只中で運送会社の車が来て荷物を運んでいたらしい。しかもその運送会社はグロリアおばさんが電話で依頼して、彼女のクレジットカードで支払われたという。
おばさんはそんなこと知らない。はめられたという。
とうとう逮捕されるのか?
さっそく関係者のリストを作る。
可能性リストを作る。一人づつ調べていくのだ。
だれも、動機がなくてアリバイがありそう。いったい利益を得るのがだれだ。
美術品を奪っても処分できるのか?
このままでは謎が解けない。見方を変えよう。盗られたのは本当に額縁に入った絵なのか?
まるで、シヴォーン・ダウドの作品を読んでるみたい。とても良くできている。
テッドの推理が冴える。カットとサリムの活躍も見事だ。
聞いてみれば、みんないろんな問題を抱えている。
謎は解けてきたのか?
テッドはまたまた迷子になってしまうのか?
そして、最後に、
とても面白い。後味爽やかなミステリーだ。
わしの勝手なおすすめ度。
星3つ半。