ジョン・ル・カレ、「我らが背きし者」
ジョン・ル・カレって言うたら、昔、「寒い国から帰ってきたスパイ」って本
を読んで以来やなあと思った。乏しい記憶をさかのぼって見ると、本の後半に
封がしてあって、ここまで読んで面白くなかったら返品できますと言うような
キャッチフレーズがついた最初の本だったように思ったりするが、もしかした
ら全くの記憶違いかもしれない。それでどうと言うことは記憶にないし、内容
もさっぱり覚えていないけど、何かええ本やったなという記憶だけ小さく残っ
ていたので、気になって読むことにしたのだ。
ちょっと分厚いんでしんどいかなあって思ったけど結局は面白くて一気に読ん
でしまった。
カリブ海の朝7時、アンティグア島で、ペリグレン・メイクピースという男が
三セットのテニスの試合をした。
物語はこうして始まった。
イギリスのオックスフォード大学で教員をしていた普通の男ペリーとその恋人
で切れ者弁護士のゲイルは幸運な偶然でカリブ界に浮かぶリゾート島に行って
いたのだ。
そこで不思議な男、ディマに巡り合う。危険が一杯そうな。滅茶苦茶金持ちそ
うな。魅力があって、存在感があって、あぶないヤツ。
ロシア人で危ない組織を操って世界で有数のマネーロンダリングをして巨額の
金をもてあそんでいる男だ。ペリーはこの男の存在感に一遍に魅せられてしま
った。その男から不思議な依頼を受けたのだ。
「お前とお前の国、英国のフェアーな精神を見込んで頼みがある。取引をして
くれ。わしの組織とそれに関わる英国などの大物達の秘密をばらすから、わし
と家族を安全に英国に連れて行って、生活させてくれ」と言うような話だ。
そこから、恋人達とディマとその家族たちの冒険とサスペンスが始まる。
ペリンは早速英国の諜報機関と連絡をとった。
そして、英国、ロシア、フランスを又にかけた組織と諜報機関とスパイたちと
ペリン、ディマたちの駆け引きが始まった。
胸のすくような活躍をするスーパーマンは誰もいない。
登場人物も誰の妻、子供、誰それの上司、部下なんて代名詞でしか語られない
かのような人物はいない。一人、一人、複雑な人生を抱えてお互いに関わりあ
っている。
派手なアクションもない。心理的な葛藤と駆け引きがじりじりと進んでいく。
ディマは無事に英国に行けるのか?
世にも美しいナターシャは無事に子供を産めるのか?
じっくりと読ませるいい作品だと思う。
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ありがとうございました。