題名と著者。
浅田次郎、「流人道中記 上、下」。
どんな話か。
石川乙次郎は町奉行所のしがない与力、要するに下級役人だ。
元は、もっと貧しい下役人の次男坊、一生ひや飯食いの暮らしのはずが、運良く養子の口がやってきた。
それで、石川家の15歳の娘きぬと養子縁組。なれない役所勤めが始まった。
家でも役所でも落ち着かない日々。そんなある日、突然お役目がやってきた。
青山玄蕃という旗本が不義密通の罪で捕まった。しかしあろうことか、切腹しないという。やむなくお家断絶の上、蝦夷地、松前伊豆守様お預かりという沙汰が降り、乙次郎に護送の役目がまわってきたのだ。
さて、珍道中が始まった。
相手は大身の御旗本、最初から圧倒されている。どっちがお供やら・・・。
ましてや、乙次郎は旅なんか初めてだ。さらに、お供の弥五郎が途中で逃げ出してしまった。
こうなったら、いやでもついていく格好になる。
さて、お立ち会い。
一行は、といってもたった二人、北へ向かう。
かれらが出会う人たちとは?
かれらが出会う出来事とは?
かれらが引き起こす、もろもろとは?
おやおや、稲妻小僧登場。泣く子もだまる大強盗。なぜこんな宿場町へ。
賞金稼ぎと飯盛女。
大立ち回りか、聞くも涙の人情話か。
一杯一掬千載月で一件落着。
旅は続く。
今度は、仇討ち侍登場。
やりたい仇討ち、やりたくない仇討ち、やるしかない仇討ち。
一生、仇を求めて彷徨うのか?
そして、押し込み強盗さわぎに巻き込まれた亀吉の不運。
あわれ刑場の露となるか?
そして仇討ちは?
旅は続く。
宿村送りの御菊に遭遇。
宿村送りとは?
伊勢詣での帰りに病にかかる。おぼつかない命。せめて故郷へ?
はたして?
飢饉にあえぐ東北の村。
帰ってどうなる?
旅は続く。
いつのまにか青山玄蕃の人となりを知ってしまった。
秘密もわかってしまった。
これからどうなる。
蝦夷地はまだ遠い。
読んでみて。
江戸時代の旅って、こんなんやったんか。
とても面白いロードストーリー。
歩いて行く旅は見えるもんが違ってくる。1日歩いたらちょうどええところに旅籠がある。電車や飛行機でビュンビュン行くのもええけどこんな旅もええなあって思う。
奥の細道のように、風景と情緒を愛でて、もとめる旅もええけど、宿場から宿場へと人情に出会う旅もええもんだと思う。
ちょいワルそうで、訳知り物知りで自由奔放そうな罪人と、経験不足で、真面目一本の若い役人のかけあい、ドタバタ旅が、それぞれのキャラクターが湧き上がって、ハラハラどきどき、上手に読ませてくれる。
とてもわかりやすくて読みやすい。
楽しい本だった。
わしの勝手なおすすめ度。
星3つ半。