最近読んだ本、「地図と拳」、「硝子の塔の殺人」。

  • 2022年12月15日
  • 48人

題名と作者。

小川哲、「地図と拳」

概略。

満州の荒野は果てしなく広い。ロシアにもつながっている。朝鮮にもつながっている。時は日露戦争の前から始まる。

ロシアの鉄道網が満州に向かっている。ロシア人がやってくる。軍人もくる。民間人も神父も。

日本も満州を狙ってる。未開の地に新しい国を創ろう。

未開の地は不毛の地でもあった。

完封吹き荒ぶ荒野。何もない。貧しさだけがある。

土には燃えない土と燃える土がある。

飢えと寒さで土になっていく人々。

この荒野のどこかに楽園があるらしい。それを信じて村をでた家族がいる。

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」と言われて、日本から満州に渡った男がいる。

クラスニコフ神父は、義和団の一味に命をとられても許すことができるのか?

ひとそれぞれの思い、賊の、軍の、国家の思惑、いろいろなものが凝縮して、李家鎮ができていく。

地図にはあるけど、実際にはない島とは?

仙桃城炭鉱が虹色の都市を生み出したか?

鶏冠山集落の運命は?

義和団の後は、国民党軍か共産党軍か? 日本軍は? ロシア軍は?

不死身の孫悟空の運命は? 娘は?

写真を撮った子供に又会えるのか?

・・・・・

読んでみて。

昔、大連や瀋陽(昔の奉天)に行ったことがある。

満州国時代の建物や施設がいっぱい残っていた。各地にヤマトホテルがある。大連駅や瀋陽駅の駅舎も日本の上野駅みたいだ。そのあと、長春(昔の新京)にも行った。

満州国の首都だったとこだ。残された宮殿跡も公開されている。しかも偽満州国として、大々的な反日教育の場所にもなってる。

あの李香蘭のいた満映跡など、わしらにとっては、生まれる前の時代であっても昔の日本の足跡ということで郷愁の思い出みてる風景が、かの国の人たちにとっては憎いだけの思い出にすぎないということをつくづく分からされた。

今のロシアのウクライナに対する侵略行為をみても、この国のやりそうな、やったであろうようなことも想像するのは難しくない気がする。

そんな時代に生きた英雄ではない普通の人々の群像がこの本のなかで立ち上がってくる。

とても興味深い。

とても考えさせられる。

とても面白い。

わしの勝手なおすすめ度。

星4つ。

 

 

題名と作者

知念実希人、「硝子の塔の殺人」

概要。

雪深い信州の森の中にガラス張りの大邸宅。とても奇妙な形をしてる。

持ち主である大金持ちの高津島太郎に招待されたのは、持ち主と同じミステリー愛好家たちだ。

医者や刑事、霊能力者や料理人など多岐多様な人たちだ。

そして、いきなりその大富豪が主人公的な男に殺される。被害者も加害者も明瞭だ。

そしてミステリーの大舞台が始まる。

次に殺されたのは執事だ。

そこから犯人がわからなくなる。

しかも、この邸宅は地震のために? 陸の孤島になった。

いよいよ、本格的な密室ミステリーの舞台ができた。

どう考えても、犯人は、我々の中にしかいない。

そして名探偵、碧月夜登場。

そしたまた殺人が???

みなで協力して犯人探しをせんとあかん。

しかし、犯人はこの中に?

誰を信じたらいいのか?

われらは皆、順番に殺されるのか?

その前に犯人を見つけられるのか?

読んで見て。

企みに満ちた本だ。圧倒的なミステリーの積み重ね。過去の名作が次々に引用される。エラリー・クイーンやアガサ・クリスティ、ポーやらその他一杯。

過去の名作のレトリックがここでどう考えるかのヒントになるのか?

それにしても盛り沢山。

これでもかといわんばかりの伏線と仕掛けのオンパレード。

読者への挑戦。

「これが、ミステリーだ」というドヤ顔がちょっといややなあ。

わしはへそ曲がりやから、たしかにすごい、ようできた極上のミステリーと思いつつも、

ちと鼻白む気もせんではない。

とにかく、とても面白い。

とてもようできてる。

傑作ではある。

わしの勝手なおすすめ度。

星4つ。

 

 

あじあんじゃんくしょん
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