ヒラリー・マンテル、「ウルフホール 上、下」。
つい先日は、エリザベス女王の国葬があった。この方はエリザベス二世だ。
奇しくもこの本は、エリザベス一成の母、アン・ブーリンとヘンリー八世の時代の話。
知らずきに時宜を得た本を読んでいたのだ。えらい、えらい。
読むのはとても大変だった。
上巻も下巻も四百数十頁の大作だ。しかも、人間関係がとても分かり難い。
歴史上の有名人物ばっかりなんやろから、イギリスの人、特に歴史に興味ある人には常識なんやろけど、わしにはさっぱりわからん。巻頭にある登場人物の紹介やら、ヨーク家、チューダ家などの系図をしょっちゅうめくっては、戻り、めくっては戻りと、とても忙しない。
老眼にとてもこたえる読書であった。
事件そのものはとても面白い。
権謀術数渦巻く英国王室の中だ。
国王ヘンリー八世は王妃、キャサリン・オブ・アラゴンにちょいと飽きて来た?
それとも、いきなりアン・ブーリンに心奪われた?
しかし、カトリックの国だ。簡単に離婚できない。
ここから歴史が始まる。
掟があって思ったようにならんのなら、その掟を変えてしまえば良い。
えらいさんは誰しもそういう発想に走る。
カトリックの元締めはローマ教皇庁。そう簡単には折れない。
ならばどうする?
離婚できないならば、元々の結婚をなかったことにすればいい?
王様側につく人、教会側につく人。
それだけの問題でもなさそうだ。キャサリン・オブ・アラゴンの背後にはスペイン王国と神聖ローマ帝国カール五世がついてる。英国王はフランス王ととても近しい。
この頃のヨーロッパの王朝は血縁関係が入り乱れているのだ。
どこからひょいと親戚の、いとこの、おじさんの、またいとこ、なんかが現れてくるかわからんのだ。
そして、みんな、財産と権力を争ってる。
誰が、敵か誰が味方か? 敵の敵は味方なのか?
闇の中を取り仕切っていたのは、枢機卿のウルジーだ。絶対権力を握って君臨してる。
その下で着々と実力を蓄えるのがトマス・クロムウェル。
ところがある日突然、ウルジーが失脚する日がやって来た。
トマス・モアが異端狩りを始める。
異端とはなにか?
英国王と教会とどちらがえらいのか?
アン・ブーリンと英国王を巷でおとしめる風評をばら撒いてる女がいる。
預言者なのか? 誰かに操られているのか?
アン・ブーリンの戴冠の日が近づく?
キャサリン・オブ・アラゴンとその娘メアリー王女の運命はどうなる?
陰謀、権謀、虚々実々の駆け引き。
闇の中で権力と金が動く。
その中心にいるのはもしかしてクロムウェル?
とてもややこしい。
アン・ブーリンが妊娠? 出産?
さてどうなる。
トマス・モアの運命は?
日本の古代史モノを読む時も、天皇家の系図や、藤原氏、蘇我氏等などの系図を見ながら読んでいかんと誰と誰がなぜ仲がいいのか、誰の敵はなぜ、この人なのか、いろいろとても難しいし、それでも見ながらでないとわけわからんようになってしまう。
ましてや、こっちの話は、ヨーロッパ全土にわたる人間関係と国際関係。
とても疲れる。
でもとても面白い。
これがまた、3部作なのだそうだ。
頑張って、続きのやつも読まんとあかん。あと3冊。えらいこっちゃ。