最近読んだ本、「波の上のキネマ」、「蕪村」

  • 2019年9月22日
  • 1人

増山実、「波の上のキネマ」

わりと軽めの楽しめるやつかなと思いつつ読み始めた。
そういう傾向は無きにしもあらずやけど、途中からグングンと内容に惹き付けられた。
後半は一気に読んでしまった。
とても面白い。
映画を見たら元気をもらえる。その通り。
安室俊介はとても悩んでいる。尼崎の立花という相当ディープなばしょでおお祖父ちゃんの代から
「波の上キネマ」という映画館を経営してるんやけど、このご時世ありがちな時代の波が押し寄せてきて、
廃業の危機に瀕しているのだ。
ここを閉じてパチンコ屋になるのかと思うと情けない。しかし、これではやっていけない。ほぼ
気持ちは固まってきたけど確定するまでに、何故、お祖父ちゃんがここ、この場所に映画館を
開いたのか気になってきて、それを知りたいと思った。
色々聞き回ってるうちに、廃館がニュースとなって地方新聞に載ってしまった。
そして、見知らぬ男、リュウ・ツァイホン劉彩虹から電話がかかってきたのだ。
どうも、お祖父ちゃんの若い頃を、そして映画と映画館にまつわる因縁話を知ってる人らしい。
戦後すぐの大阪のドヤ街、食うや食わずの男がいた。沖縄出身の安室俊英という男だ。
なけなしの金で飯を食ってるところにある男から声をかけられた。南の島にエエ話があるらしい。
仕事はキツいけど頑張って働いたら大金が貯められる。衣食住保証でサトウキビを採るだけ、楽なもんや。
うまい話は危ない話とわかっていても切羽詰まった俊英は乗らざるを得ない。
着いたところは八重山、西表島。
うまい話どころか地獄が待っていた。炭鉱暮らしの悲哀。
ギリギリを越えた暮らしに耐えられるのか?
那覇辻の遊郭で出会ったチルと再会できるのか?
ウニゲーサビラ! タシキークィミソーレとは何を意味するのか。
マラリアはびこる緑の牢獄とは?
そして映画との出会い。
カンカン帽のハーモニカに震える心。
台湾の嘉義から来た志明とは?
出てきた映画、
七人の侍、タクシードライバー、君の名は、ストレンジャー・ザン・パラダイス
伊豆の踊り子、渦、野生の蘭、夜、冷血、街の灯、帰らざる河、226
CITY LIGHTS、SHALL WE DANCE、執念の毒蛇、雨、或る女、大いなる幻影
山猫、椿姫
それはジャングル・キネマ?
とても面白い。

小嵐九八郎、「蕪村 己が身の闇より吼て」

わしの大好きな与謝蕪村の絵が目についた。おもわず手に取ると、その題もまさに「蕪村」。
これは読まんとあかんやろ。
生まれはどうも大阪らしい。淀川のほとり、毛馬村あたりか?
幼少期から成人までのあたりは殆ど謎に包まれている。
その謎がどう解き明かされるのか?
そして、京に、江戸に?
俳諧と旅の暮らしの始まりだ。
芭蕉のすぐ後の世代だ。しかし、この時代の俳匠たちとも全く違う、しかも芭蕉の後追いでもない、
あるいは斬新で、あるいは素朴で、あるいは鋭く、あるいはとぼけて、ユーモアたっぷりでいて
深い業もありそうな作品はどうして出来上がっていったのか?
「北寿老仙をいたむ」
君あしたに去ぬゆふべのこゝろ千々に
何ぞはるかなる
君をおもふて岡のべに行つ遊ぶ
をかのべ何ぞかくかなしき
蒲公の黄に薺(なづな)のしろう咲たる
見る人ぞなき
雉子(きゞす)のあるかひたなきに鳴を聞(きけ)ば
友ありき河をへだてゝ住(すみ)にき
へげのけぶりのぱと打ちれば西吹風(にしふくかぜ)の
はげしくて小竹原真すげはら
のがるべきかたぞなき
友ありき河をへだてゝ住にきけふは
ほろゝともなかぬ
君あしたに去ぬゆふべのこゝろ千々に
何ぞはるかなる
我庵(わがいほ)のあみだ仏ともし火もものせず
花もまゐらせずすごすごと彳(たゝず)める今宵は
ことにたふとき
専門的なことはわからへんけど、俳諧の世界からこんな自由な形式で、おしゃれで
繊細な詩がどうやってできたんやろ?
春の長閑さが揺蕩うような、「春風馬堤曲」はどうやってできたんやろ?
それが、子規、碧梧桐につながっていく?
そして、絵の世界。
中国の南画の臨模のような世界から、どんどん独自の省略が効いた簡潔な
そしてのんびりとユーモラスな世界が広がっていくのはどんな暮らしの中から
なのか?
平安人物志という番付本の画家の部で、大西酔月、円山応挙、伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村と
おまけで5番目に入れてもらった評価の画家の絵ってなんなのか?
蕪村と応挙との関係とは?
蕪村の弟子の呉春は応挙の弟子となりその後、四条派とよばれ、京都画壇の中心になっていく。
えらいもんだ。
池大雅と共作?勝負?の「十便十宜図」の素晴らしさ。究極の文人画。
あの川端康成が家を買わずにこれを買ったというやつだ。
書の世界もすごいらしいけどわしにはようわからへん。
知ってることもあれば知らんこともたくさんある。人物伝的な本。
内容は面白いけど、文章がえらい変わってる。かなりゴワゴワと違和感がある。
ええとこでも中々入っていかれへん。
それでも興味あるんで読んでしまった。

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ありがとうございました。