最近夢中で読んだ本、村上哲見、丸谷才一

  • 2008年6月17日
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村上哲見、「宋詞の世界」
4月の終わりに武夷山に旅行して、たまたま柳永という詩人を知り、
興味を持ったのが宋詞を知るきっかけだった。
唐詩は酒、宋詞は茶と言われるようだ。
これでも分るように、宋詞には優美という印象がついてくる。
更に、宋詞は管絃の世界と密着しているようで、決まった曲の形が
あってそれに合わせて歌をつくるように詞を作っていく世界があったようだ。
そうなるとなおさら高雅な世界となって、詞を良くするという事が
当時の士大夫の教養とか人格をあらわすバロメータでもあったようだ。
例えばこんな詞がある。
晏殊 「浣渓沙」
一曲の新詞 酒一杯
去年の天気 旧亭台
夕陽 西に下れば 幾時か回らん
奈何す可くも無く 花は落り去き
曾って相識りし似く 燕は帰り来る
小園の香径 独り徘徊す
晏殊といえば有名な宰相だと思う。
他にも陸遊、柳永、蘇東波、欧陽修、李煜、辛棄疾など文化人として
そうそうたる名前が出てくる。
そしてこれがテレサ・テンの歌にもなっているから、歌心というのは
同じなんだなと感心した次第だ。

丸谷才一、「闊歩する漱石」
今でこそ文豪といわれる漱石が華々しくデビューした小説
「坊ちゃん」や「三四郎」、「我輩は猫である」などは時代を先駆ける
冒険心に満ちた新しい文学、文体つくりの中で生まれてきたものである
ということを漱石の英国の留学生活とその時代の英国や欧州の文学の
空気と重ね合わせて解説している。
今迄、気がつかなかった事をなるほどと言う目で見てみれば、
漱石文学も、又、読み返してみたくなる一面がある。
「三四郎」や「虞美人草」は今でも好きなので時々読んでいるけどね。

hon080617

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