最近読んだ本、「星落ちて、なお」、「生還者」。

  • 2022年5月20日
  • 1人

澤田瞳子、「星落ちて、なお」

明治22年春。
河鍋暁斎が死んだ。
日本画の名人。奇想の画家。というよりは画鬼と言われた男。
本人はいたって普通の人間と思ってた?。少し前の世代の北斎こそがライバルと思っていた?
知らんけど。
これまでにもこんな人は沢山いた。
岩佐又兵衛、曾我蕭白、歌川国芳・・有名な伊藤若冲もその一人。
みなさん美しい、優雅で繊細な絵ばっかりではない。
個性的で強烈な絵を描きはる。
戦で切られて血を流してる人をかくやつがいる。
山姥を描くやつがいる。
幽霊を描くやつがいる。
火事で焼かれて、身悶えする人をかくやつがいる。
河鍋暁斎は死の床で、震える手で、嘔吐している自分自身とそれをみて
仰天してる医者を描いてにやりと笑ったらしい。
どんな性格をしてたんやろ?
とても面白いけど、身内にとってはとても難儀な男やったに違いない。
そんな男の娘に生まれたとよという女の生き様を描く物語だ。
一世を風靡したとは言え、時代が変わりつつある。
暁斎たち古い世代の画家たちの時代は終わりつつある。新しい画壇がうまれつつある。
西洋の息吹を浴びた日本の文化がすべて欧米礼賛風になってしまった。
彼の流儀をついだところで、絵が売れる、世の賞賛を浴びることはなくなりつつある。
それでも、彼の血をついだものたちには、赤い血の代わりに墨が流れてる。
彼の凄まじい業にとりつかれてしまってる。
とよ、こと暁翠しかり、彼の息子で、彼に逆らい続けたはずの息子、周三郎、こと暁雲しかり。
かれらの生きた様が生き生きと描かれている。
とても面白い。

下村敦史、「生還者」。

ずっと前に、インドのダージリンあたりに旅したことがある。
とてもええとこやった。その時、はるか西の方?にとても美しい山が見えた。
あれが、カンチェンジュンガという山だと教えられた。
ネパールにある。夏でも雪を頂いた急峻な山、標高約8500m。
こんなとこでも登る人がいる。
昔は、そういう登山って、資金面でも人数規模でもかなり大掛かりな一大プロジェクトで
印象があったけど、今は随分状況が違ってきてるみたい。
個人であったり、小グループが簡単にとは言わないまでも、比較的自由に登山ができる
世の中になってきてるみたい。
山岳ミステリーも舞台がヒマラヤ山系になってきた。とても壮大、とても面白い。
ある日、七人の日本登山者チームの遭難が報道された。
その内4名が遺体で発見された。
どうやら大規模な雪崩にやられたらしい。
増田直志のところに兄謙一が遭難して亡くなったと連絡がきた。
遺品のザイルがちょっとおかしい。ナイフの痕ではないか?
そして、生存者、高瀬がインタビュー。どうもこの人は単独行だったらしい。
猛吹雪の中、登山中、チームと遭遇、助かったと思ったら、見捨てられた。
唯一、加賀谷という人が装備をわけてくれ、おかげで助かったという。
加賀谷は英雄だ。
そして、その後、東が生還、発見された。高瀬のことは知らない。
加賀谷はチームから装備を奪った悪人だ。
二人の生還者、いうことが食い違う。どちらが本当か? どちらが嘘つきか?
直志が調べ始める。
同じ頃、雑誌記者の八木澤恵利奈も記事を書くため調べ始めていた。
高瀬の言うことは本当か? 東のいうことはどうなんだ?
直接話を聞きに行く。 どこかおかしい。
なぜ日本人登山チームがカンチェンジュンガのような山を目指したのか?
なぜ高瀬が単独で登ったのか?
それは本当なのか?
チームとは何なのか? 寄せ集め? 目的は?
疑問がいくらでもでてくる。
彼らの装備?、高瀬の装備? 謎だらけ。
ネットの交流サイト? サバイバーズ・ギルトとは何か?
白馬登山での遭難事件に関係が?
少しずつ、糸がほぐれてきた。
厳冬期に白馬山で何があった。
吹雪の中のカンチェンジュンガで何があった。
ビーコンの謎とは?
そして、現場へ? カンチェンジュンガへ?
とても面白い。

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