Miles Davis、「Sketches of Spain」

このアルバム、昔はあまりいいとは思わなかった。オーケストラと
マイルスのトランペットとは合わないような気がしていたのだ。
が、今は気に入っている。年をとって悟りを開いたからだろう。
先日、「死刑台のエレベーター」という古い映画のリプリント版を見て
マイルスの演奏に聞き入ったのだ。
あの録音は、映画が先に出来て、その映画をスクリーンに映しながら、
それを見ながら、即興で吹いたソロなのだそうだ。
エレベータに閉じ込められた男の焦りと絶望、待つ女の期待と不安と
焦燥、暴走する若い恋人達。そういう登場人物の心の動きを、
トランペットの繊細な響きがドライブするかのようだ。そして、何が
起きるか想像できない緊迫感を音で創っていくかのようだ。
それで、「やっぱりマイルスはええやん」ということでこれを思い出した
のだ。
まず、ジャケットがいい。
赤い煉瓦屋根の古いスペインの街、アランフェスを想い浮かべさせる
ような真っ赤な地平の上で、一人のトランペット吹きが、体を反らせて
吸いこんだ息を美しい音色にして吐き出しているのだ。
それにタイトルがいい。
印象風景を音楽でスケッチするのか?
私の画の心と同じではないか。
ロドリゴのギターの為の名曲集だが、トランペットで聞いても素敵だ。
もちろんマイルス・ディビスのなせる技だからだ。

ongaku110120

毎週木曜は映画、音楽、書画に関する話です。